先月の総選挙は、小選挙区(254議席)、比例代表(46議席)で争われ、尹政権の「中間評価」と位置付けられた。改選前は野党「共に民主党」が156議席(系列政党を含む)、与党「国民の力」が114議席(同)で、野党が国会の議席の過半数を占める「ねじれ」状態となっており、先月の総選挙はこの状態が解消されるかが焦点だった。
開票の結果、「国民の力」が108議席、「共に民主党」が175議席を獲得、尹大統領を支える「国民の力」が大敗する結果となった。野党勢力は、憲法改正案や大統領の弾劾を求める議案を可決できる200議席には届かなかったが、引き続き、政局の主導権を握ることができる。
「国民の力」は大敗した責任を取り、党トップのハン・ドンフン(韓東勲)非常対策委員長のほか、ハン・ドクス首相、それに国家安保室を除く首席秘書官級以上の大統領室高官が全員辞意を表明した。
選挙の結果について、韓国の聯合ニュースは「任期を3年残す尹大統領は今後の国政運営方式の再設定が避けられないとみられる」と指摘。朝鮮日報は「尹政権が掲げる労働改革、教育改革、年金改革はもちろん、医師増員などの医療改革も今後更に難しくなる見通しだ」と伝えた。
選挙後、「共に民主党」の李代表は「(尹大統領と)当然会い、当然話をする。尹大統領も当然、野党の協調と協力が必要だろう」と話し、尹大統領に会談に応じるよう求めた。李代表は2022年8月の代表就任以来、尹大統領に対し、繰り返し会談を提案してきたが、尹大統領は応じず、これまで一度も実現しなかった。
一方、尹大統領は選挙結果を受けて、「国政刷新」に努める姿勢を示し、与野党からはそのためには「まずは大統領自らが変わらなければ」との声が上がった。難局を打開するためには、野党との「協治(協力の政治)」が不可欠で、韓国メディアからは「(李代表との)会談の成否が国政基調変化のリトマス試験紙とみられている」(東亜日報)などと指摘される中、尹大統領が李代表との会談に応じるか注目されていた。
先月29日、両氏の初会談が実現。予定時間を超過し、約2時間に及んだ。李代表は会談の冒頭、「国政のかじを切る最後のチャンスとの気持ちで、国民の言葉に耳を傾けてほしい」と求め、あらかじめ準備したA4用紙10枚分の原稿を読み上げながら、政権運営への批判や要望を伝えた。
現在、韓国では、政府が医師不足対策として打ち出した大学医学部の定員増の方針に医療界が猛反発し、医療現場に混乱をきたしているが、両氏は定員増の方針では一致を見た。しかし、「共に民主党」の報道官によると、国民生活をどのように改善するかをめぐっては政策的な違いがあることが確認されたという。
また、李代表は尹大統領の対日姿勢にも言及。東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出や、韓国が領有権を主張する島根県の竹島を引き合いに「国民のプライドが傷つかないよう、政府レベルで積極的に努力してほしい」と注文を付けた。
会談後、大統領府は「野党との意思疎通を通じた政治協力の第一歩を踏み出した」と評したが、「共に民主党」の報道官は「大きな期待をしていたが、(尹大統領の)変化が見られなかった。状況認識があまりにも安易で今後の国政が懸念される」と批判した。
両氏は今後も継続的に対話を重ねていくことで一致したが、会談で李代表から示された様々な要求に対し、尹大統領がどこまで譲歩するかがカギとなりそうだ。
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