今年4月、韓国では総選挙があり、尹政権の「中間評価」と位置付けられ注目された。尹政権を支える与党「国民の力」が108議席、最大野党「共に民主党」が175議席を獲得、与党が惨敗する結果となった。一方、野党勢力は、憲法改正案や大統領の弾劾を求める議案を可決できる200議席には届かなかったが、改選前に引き続き、政局の主導権を握れることになった。
総選挙後、5月第5週の尹大統領の支持率は21%まで下落したが、その後、徐々に回復。7月第3週には29%まで回復した。しかし、政府が医師不足対策として今年2月に打ち出した大学医学部の定員増をめぐる議論が過熱したことも影響して、尹大統領の支持率は再び下落傾向となった。医学部の定員増をめぐっては、医療界が猛反発。研修医が集団離職し、大規模病院は人手不足に陥った。新患の受け入れが制限されたりしたため、中規模病院に患者が流れ運営を圧迫するなど、影響は医療界全体に広がった。医療の混乱は未だ続いている。
先月29日、尹大統領は記者会見を開き、今後の国政運営の方向性などを示した。尹政権として打ち出している年金、医療、教育、労働の4分野の改革については「必ず実現する」と強調。「韓国の生存と未来がかかった課題だ」と訴えた。大学医学部の定員増については「もう医学部の増員は終わった(決まった)ため、改革の本質である地域・必須医療の再生に政策の力量を集中する。2025年度の医学部の定員募集は現在、滞りなく進んでいる」と述べた。
韓国ギャラップが13日に発表した世論調査の結果、尹大統領の支持率は20%で、就任以来、最低となったが、不支持理由で最も多かったのは、この「医学部定員拡大」で18%だった。年代別にみると、70代以上の支持率が3週間前より23ポイントも下落しており、韓国紙のハンギョレは「『救急室たらい回し』などの医療空白危機が現実化していることで、健康問題に敏感な高齢層が背を向けたとみられる」と伝えた。政党支持率は、尹政権を支える与党「国民の力」が28%となり、こちらも政権発足後、最低を更新した。
ハンギョレは14日付の社説で「議院内閣制の国だったら既に『内閣総辞職』している状況だ」と指摘。医学部定員拡大に端を発する医療現場の混乱について、「(尹大統領は)極めて深刻化している『救急室のたらい回し』に不安を感じている国民を前にして、『非常体制は円滑に稼働している。救急室に行ってみろ』と言う。まともな根拠も示さずにひとまず医学部定員2000人増員を推し進めておきながら、実質的な対策作りには手を付けずにいる」と批判した。社説は結びに「尹大統領には、どうか今が深刻な危機だということを真剣に認識してもらいたい」と求めた。
16日には、世論調査会社のリアルメーターによる調査結果も発表され、尹大統領の支持率は政権発足後、最低(27%)だった。
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