李氏は南東部キョンサンプクド(慶尚北道)アンドン(安東)郡(現・安東市)出身。貧しい家庭に育ち、小学校卒業後は少年工として働きながら検定考試に合格、中学・高校の卒業資格を得た。1986年に韓国の中央大学を卒業し、弁護士となった。その後、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)ソンナム(城南)市長を2007年7月1日~2018年3月15日まで務めた後、2018年7月~2021年10月25日まで京畿道知事を歴任した。2022年3月の大統領選に立候補し、最後まで尹氏と激しい争いを見せたが、約24万票の僅差で敗れた。それまで国会議員の経験はなかったが、2022年6月の補欠選で当選し、晴れて議員バッジを着けることになった。そして、同年7月、党代表選に立候補を表明。同党の歴代最高となる77.77%の支持を得て他の候補を圧倒し、勝利。党代表に就任した。これまで、尹政権に真っ向から対峙(たいじ)し、友好路線を敷いた尹氏の対日政策に対しても「屈辱外交」と批判を続けてきた。李氏は「対日強硬派」として知られ、過去には日本を軍事上の脅威がある「敵性国」と呼んだほか、東京電力福島第1原発の処理水については「核汚染水」と表現。処理水の海洋放出が始まった際は、尹政権が放出を事実上容認したとして、ハンガーストライキで抗議したこともあった。
その李氏は「司法リスク」を抱えている。城南市長だった当時に進めた都市開発をめぐる収賄の疑惑や、対北朝鮮協力事業をめぐって民間企業に対し、北朝鮮に計800万ドルを不正に送金させた疑惑、京畿道知事時代に民間企業に便宜を供与した疑惑などがあり、現在5件の公判を抱えている。このうち、2022年の大統領選に絡み、虚偽の発言をしたとして、公職選挙法違反罪に問われた李氏の判決公判が先月、ソウル中央地裁であり、地裁は李氏に懲役1年、執行猶予2年(求刑懲役2年)の有罪判決を言い渡した。今後、最高裁で判決が確定すれば、李氏は大統領選に出馬できなくなる。判決当時、韓国紙の東亜日報は「李氏の大統領への道に『赤信号』が灯った」と伝えた。有罪判決を受けた李氏は控訴。公職選挙法違反事件の裁判は一審は6か月以内、二審、三審は3か月以内に終わらせなければならないと法律で定められている。前述のように、一審判決が今後の上級審で確定すれば、李氏は大統領選挙に出馬できないため、李氏が代表を務める「共に民主党」は、尹氏の妻、キム・ゴンヒ(金建希)氏をめぐる問題などで攻勢を強め、「6か月以内に決着をつけよう」との掛け声の下、尹氏を弾劾に追い込もうと目論んでいた。
そんな矢先に、尹氏が今月、「非常戒厳」を一時宣言した。「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出。14日に採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これにより、尹氏の大統領としての権限は停止した。今後、憲法裁判所が尹氏を罷免すべきかを判断し、罷免になると、60日以内に大統領選が行われる。
李氏にとっては思わぬ形で国政トップに就くチャンスが巡ってきたと言える。18日、調査会社JOWON& C&Iが「ストレートニュース」の依頼を受け14~16日に行った世論調査の結果、次期大統領としてふさわしい人物として李氏は48%でトップだった。2位に6倍もの差をつけ独走している状況だ。
李氏は与党「国民の力」に対し、政府の政策を決めるために国会と与野党の代表者が話し合う「国政運営共同体」の設置を求め、「国民の力」は20日、これを受け入れることを決めた。現在、国会では与党の議席数が過半数に届いていないため、単独で予算案や重要法案を可決できないが、最大野党「共に民主党」が協力することで国会運営や行政は円滑に進みやすくなる。韓国メディアは協議会の設置に関連し、最も有力な大統領候補に浮上している李氏が国政正常化に取り組む姿勢をアピールすることで、早くも「大統領選への歩みを始めた」との見方を伝えている。
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