ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の職務を代行するハン・ドクス首相
ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の職務を代行するハン・ドクス首相
韓国の最大野党「共に民主党」は26日、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の職務を代行するハン・ドクス首相の弾劾訴追案を国会に提出した。本日27日、国会本会議で採決が行われる見通し。大統領代行の弾劾訴追手続きは史上初めてで、可決すれば「大統領の権限代行の権限代行」が職務を担う異例事態となり、政局が一層混乱することは必至だ。

政治的混乱の発端は、尹氏が今月3日深夜、「非常戒厳」を宣言したことだ。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種で、戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するもの。行政や司法の機能は軍が掌握し、言論・出版・結社の自由を制限することも認められる。戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。

発出を受け、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入した。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席した190人の議員全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。14日に採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これにより、尹氏の大統領としての権限は停止し、ハン氏が大統領職を代行することとなった。憲法86条で、韓国の首相は「大統領を補佐し、行政に関して大統領の命を受け、行政各部を統括する」と定められている。「大統領が空席になったり、事故によって職務を遂行できなくなったりした」場合に権限を代行するとの規定もある。

ハン氏は大統領代行を担うにあたり、14日、「もっぱら国政を安定的に運営することに、全ての力と努力を尽くす」と表明した。とりわけ、経済分野では金融・為替市場の円滑化、対外分野では米韓、日米韓などとの信頼維持に全力を注ぐ考えを明らかにした。そのハン氏は、19日には石破茂首相と約20分間にわたって電話会談し、両国の緊密な連携を再確認した。23日には韓国の経済6団体の代表と昼食会を開き、「韓国の未来のための政策決定がなされるよう、政策の一貫性・整合性を引き続き守ることが代行体制の根本だ」と強調した。

ハン氏が混乱収拾に奔走する中、最大野党「共に民主党」は、尹氏の弾劾審判を行う憲法裁判所で欠員になっている判事の任命を速やかに行うようハン氏に要求。しかし、ハン氏は「与野党が合意できる案を出すまで任命を保留する」と表明し、要求を拒否した。これに、「共に民主党」は「(ハン氏には)権限代行を遂行する資格も憲法を守る意志もないことが明らかになった」(同党のパク・チャンデ院内代表)などと反発し、26日、ハン氏への弾劾訴追案を国会に提出した。

ハン氏の弾劾訴追案は、本日27日にも国会本会議で採決が行われる見通し。大統領に続き、権限を代行する首相まで職務停止となれば、行政のさらなる停滞と混乱は避けられない。一方、「共に民主党」の強硬姿勢に、与党「国民の力」からは批判の声が上がっている。同党のクォン・ソンドン代表権限代行兼院内代表は26日、「弾劾で国政をマヒさせ、焦土化させる『共に民主党』こそ、内乱政治を日常的に行っている」とした上で、「(ハン氏を)弾劾するということは、国政を弾劾し、民生を弾劾し、外交を弾劾し、大韓民国を弾劾するということだ」と非難した。

ハン氏の弾劾訴追案が可決すれば、チェ・サンモク経済副首相兼企画財政相が大統領代行を務める。
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