<W解説>集団休学の医学生がこぞって復学も、予断許さぬ理由=韓国・大学医学部定員増めぐる問題
<W解説>集団休学の医学生がこぞって復学も、予断許さぬ理由=韓国・大学医学部定員増めぐる問題
韓国政府が大学医学部の定員増の方針を打ち出したことに医療界が反発し、医学部生が集団で休学している問題をめぐり、ほぼ全ての医学部で学生が全員復学する見通しとなった。政府は25年度は医学部の定員増に踏み切ったが、講義(授業)を拒否している医学部生が今月末までに復学することを条件に、26年度の定員については増員前に戻す方針を示している。通信社・聯合ニュースは「集団休学で混乱した医療教育現場が約1年ぶりに正常化する可能性が高まった」と伝えた。一方、韓国紙・ハンギョレは「教育部(部は省に相当)が提示する『全員復帰』の基準が『正常な授業が可能な水準』であるため、復帰した学生たちが授業にどれだけ出席するかが『医学部正常化』のカギになるものとみられる」と指摘した。

韓国では、特に地方において医師不足が深刻となっている。韓国国会立法調査処(所)が2020年に発刊した「OECD主要国の保健医療人材統計及び示唆点」によると、韓国の人口1000人当たりの医師の数は2.3人でOECD加盟国の平均(3.5人)を下回り、加盟国の中でも最低水準だった。

医師不足を解消しようと、韓国政府は昨年2月、医学部の入学定員を2025年度から5年間にわたって毎年度2000人増やすと発表した。定員は1998年に3507人に増えたが、2006年に3058人に削減され、以降、毎年度3058人で据え置かれてきていた。ユン・ソギョル(尹錫悦)政権は、「国民の健康と命を守るため、医師の拡大はもはや遅らせることのできない時代的課題」とし、定員増の必要性を訴えてきた。

しかし、医療界はこの方針に反発。医師の全体数は足りており、不足していると言われる原因は外科や産婦人科など、いわゆる「必須診療科」の医師が足りないことにあると指摘した。これら「必須診療科」は激務な上、訴訟のリスクも比較的高いことから敬遠されがちで、収益性の高い皮膚科や眼科、美容整形外科に医師が集中していることが結果的に医師不足を招いているとの主張だ。政府の方針が示されるや、医療界は研修医が集団辞職するなどして抗議の意思を示した。これにより、通常の診察や手術に遅れが生じるなど、医療現場は混乱に陥った。

しかし、教育部(部は省に相当)は昨年、大学医学部の2025年度の募集人員について、全国39の医学部で前年比1497人増の計4610人とすることを確定した。当初の計画より増員幅を圧縮したが、1998年以来となる定員増を決めた。

政府の医学部定員増の方針には、医学部生たちの多くも反発し、休学する形で抗議の意思を示した。韓国は3月から新学期が始まったが、各大学の医学部は学生たちが休学した状況が続いてきた。最大野党「共に民主党」の議員が先月4日、教育部から提出を受けた「2025年度1学期の医科大学受講申請現況」によると、2月25日時点で、全国40の大学医学部のうち、10校は講義の受講申請を1人もしていなかった。また、新入生までもが先輩からの圧力を受けるなどし、履修登録を躊躇(ちゅうちょ)しているとされた。閉鎖的な医学部の特性上、先輩の指示に逆らう行動は取りにくいとの指摘も出された。

政府は先月、医学部生たちの学業復帰を条件に、来年度の医学部の募集人数を増員以前の水準に戻す方針を明らかにした。これに先立ち、医学部をもつ大学40校の学長による協議体、医大協会は、政府が定員を増員前の人数に戻すならば、大学として学生を必ず復学させるとの趣旨の文書を教育部に提出した。

政府が学生の復学期限として定めた先月31日が過ぎ、韓国メディアが今月1日に伝えたところによると、全国40校の医学部のうち、1日時点で39校の医学部生全員が1学期の入学または復学手続きを終えたことがわかった。公共放送KBSは「政府や大学側が、先月末までの復帰を呼びかけながら、応じない場合は除籍も辞さない姿勢を示していたことから、医学生らの復帰が進んだものとみられる」と伝えた。

教育部は1日、「医学部生の復学を通じて、医学教育の正常化が始まった」との見解を示した。一方、教育部は定員を増員前に戻す条件として掲げた「3月以内の全員復帰」の「全員」の意味について、「正常の授業が可能な水準」としている。ハンギョレは「ひとまず学生たちが復帰したものの、実際に授業に出席するかはもう少し見守らなければならない。復帰してからも授業を拒否する可能性もあるからだ」と指摘した。KBSによると、一部の医学生の間では、とりあえず復帰をした上で、授業を欠席しようとする動きもあるという。

26年度の医学部募集定員は、早ければ来週にも決定する見通し。教育部は、学生が復学後に再び休学したり、授業を欠席したりして、「正常の授業が可能な水準」を満たしていないと判断した場合には、26年度の定員も増員する方針だ。
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