<W解説>高市首相の答弁に反発を見せる中国、影響は韓国を加えた協力関係にも=日中韓首脳会談を拒否
<W解説>高市首相の答弁に反発を見せる中国、影響は韓国を加えた協力関係にも=日中韓首脳会談を拒否
台湾有事と「存立危機事態」をめぐる高市早苗首相の国会答弁に中国が反発し、その発言の余波が、日本、中国、韓国の3カ国の協力にも広がっている。中国外務省の毛寧報道官は24日、日本が議長国として開催を調整している日中韓3カ国の首脳会談について、高市氏の発言を理由に現時点では開催できないとの認識を示した。中国側は同日にマカオで開催予定だった日中韓文化相会合も延期した。

日中韓首脳会談は、歴史や安全保障などで対立も多い日本、中国、韓国が、共通課題の解決に向けて未来志向で話し合おうと、国際会議に合わせるのではなく、独立した形で2008年から開催。以降、3カ国の持ち回りで定期的に開いてきた。これまで、核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応や、経済協力などを話し合ってきた。

2019年12月に中国の四川省・成都で第8回が開かれて以降、日韓関係の悪化や、新型コロナウイルスの感染拡大も影響して見送りが続いてきたが、昨年5月、約4年半ぶりに開かれた。気候変動や防災など6分野での連携を盛り込み採択した共同宣言では、「日中韓首脳会談と閣僚級会合を定期的に開催することで3カ国協力の制度化に努める」ともうたった。当時の岸田文雄首相は会談後の共同記者会見で「日中韓プロセスの再活性化を確固たるものとする重要な契機になった」と述べた。

第10回の開催に向け、議長国の日本は調整を進めていた。ことし3月に都内で開かれた3カ国の外相会合では、会談の早期開催に向けて調整作業を加速することで一致していた。中国の李強首相の日本訪問が実現すれば、2018年5月以来の中国首相の来日となるはずだった。

しかし、高市首相が今月7日の衆議院予算委員会で、台湾有事に関して、武力行使を伴えば日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得ると答弁。これに中国側が反発し、国民に日本への渡航自粛を呼び掛けたほか、日本アニメの公開延期、日本産水産物の輸入の事実上の停止など、相次いで経済的な対抗措置に出た。

高市首相は24日、南アフリカ・ヨハネスブルクでの20カ国・地域首脳会議(G20サミット)出席を終え、政府専用機で羽田空港に帰国した。現地滞在中、中国の李首相と接触する機会があるか注目されたが、実現しなかった。このことに関連し、中国外務省の毛寧報道局長は「我々は日本側が厳粛に中国側の懸念に向き合い、台湾をめぐる誤った言論を撤回し、実際の行動で対話に向けた誠意を示すよう求める」と述べた。

日中の対立激化に、韓国も状況を注視している。韓国紙のハンギョレは、20日掲載の社説で、韓国政府に対し、「中日対立の荒波が韓国にまで及ばないよう、慎重かつ思慮深い態度を維持してほしい」と求めた。アフリカ・中東4カ国を歴訪中の韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領は24日(現地時間)、中国が日本に強い反発を見せている状況について、「かなりのあつれきが生じているが、韓国の立場では現在の状況を冷静に見極め、韓国の国益が損なわれず最大化されるよう最善を尽くさなければならない」と述べた。

日中の対立は、日中韓3カ国の協力にも影響を及ぼし始めている。中国政府は、24日にマカオで開催予定だった日中韓文化相会合を延期した。中国外務省の毛局長は20日の記者会見で「日本の指導者が台湾に関して公然と誤った発言をし、中国の国民感情を傷つけ、戦後の国際秩序に挑戦した。中日韓3カ国の協力の基礎と雰囲気を破壊し、会議を開催する条件を失わせた」と述べた。

さらに、毛局長は24日の記者会見で、日中韓首脳会談について「現時点で条件が整っていない」とし、「最近の日本の指導者の台湾問題に関する誤った言論によって、中日韓の協力の基礎と雰囲気が損なわれた」と主張。現時点では開催できないとの認識を示した。

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