李氏をめぐっては、ソウル郊外のソンナム(城南)市長だった当時に進めた都市開発に関連し、前回大統領選の候補者だった2021年に虚偽の発言をしたとして公職選挙法違反罪に問われ、昨年11月の一審で懲役1年、執行猶予2年の有罪判決を受けた。しかし、この判決に、李氏側と検察の双方が控訴し、ソウル高裁は今年3月、逆転無罪を言い渡した。検察側の上告後、大法院(最高裁)はこの事件を裁判官全員で審理する「全員合議体」を構成し、審理を開始した。大法院は李氏の発言の一部について「虚偽事実の公表」にあたると判断。二審判決を破棄し、ソウル高裁に審理を差し戻した。
大法院の判断に、李氏は今月1日、記者団に対し、「私の考えとは全く異なる方向の判決だ」と不満を口にした。「共に民主党」は大法院を強く非難。同党のチョ・シンレ首席報道官は会見で「大法院の判決は明白な政治批判であり、拙速な裁判だ。大法院の不当な大統領選介入を強力に糾弾する」と述べた。党内では一時、チョ・ヒデ大法院長の弾劾訴追を求める声も上がった。党所属の国会議員からは「民主党はフルスイングする。持てる権限を全て使う」との強硬的な発言も飛び出した。
一方、与党「国民の力」のクォン・ヨンセ非常対策委員長は1日、「二審での非常識な免罪符にブレーキをかけ、有権者の判断を歪曲(わいきょく)した発言を撤回した大法院の判決は極めて常識的な判決だ」と評価。その上で「今、ボールは『共に民主党』と李在明候補に戻った。選挙は信頼の上で行わなければならない。虚偽事実の公表で、国民の判断を歪曲したと大法院が判断した。これ自体で、大統領候補の資格は既に喪失した」とし、「共に民主党」に対し、大統領選の公認候補を李氏から別の候補に交代すべきと主張した。クォン氏は「政治が答える番だ。これほどの判決が下されたにも関わらず、(李氏を)大統領選候補とすることに固執するなら、それ自体、国民に対する重大な侮辱だ。候補の自主的な辞退が常識だ」とした。
韓国の公職選挙法は100万ウォン以上の罰金刑を受けた場合は被選挙権を5年制限すると定めている。次期大統領の最有力候補とされる李氏が今回の大統領選に出馬できなくなる可能性もあったため、裁判の進捗(しんちょく)が注目されていた。
李氏側は、公判を大統領選後に延期するよう求める申請書を裁判所に提出。候補者の均等な選挙運動の機会を保障した憲法116条と、大統領選候補者の選挙運動期間中の逮捕・拘束を禁じた公職選挙法第11条を理由に挙げた。
ソウル高裁は今月7日、李氏の差し戻し審の初公判を、当初予定していた今月15日から大統領選後の6月18日に変更すると明らかにした。この発表について、通信社の聯合ニュースは「大統領選の投開票日と選挙運動期間が確定し、李氏が先月27日に『共に民主党』の公認候補に選出されたことから、裁判所側が李氏側の申請を受け入れたものとみられる」と伝えた。
裁判の期日が選挙後に指定されたことで、いわゆる「司法リスク」が一時的に解消された李氏は8日、大韓商工会議所など5つの経済団体の代表らと懇談会を行った。公共放送KBSが伝えたところによると、李氏は「経済と産業を政府が主導する時代は終わった」と述べ、企業の役割と政府の支援を強調したという。また、李氏は8日の「父母の日」に合わせ、高齢者の生活の安定を目指す「シニア公約」も発表した。
共に民主党は、党内から推進すべきとの声が出ていた大法院のチョ大法院長らに対する弾劾は一旦保留としたが、大法院の大統領選への介入疑惑を究明するとして、チョ氏に対する国会聴聞会を開くとしている。韓国紙の朝鮮日報は7日付の社説で「不利な判決を下す判事を弾劾で脅し、三権分立を否定しようというなら、そのような政党は党名を『独裁党』に変えるべきだ」と批判した。
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