<W解説>「親ロシア国」のベラルーシと関係強化を進める北朝鮮
<W解説>「親ロシア国」のベラルーシと関係強化を進める北朝鮮
北朝鮮の朝鮮中央通信は今月9日、ベラルーシのシュレイコ副首相率いる代表団が北朝鮮の首都、ピョンヤン(平壌)を訪問したと伝えた。「貿易経済協力共同委員会」を開催し、両国は貿易・経済協力に関する協定に調印したという。北朝鮮は最近、ロシアの同盟国であるベラルーシに接近し、多国間の連携によって米国に対抗していく姿勢を示している。

同委員会の開催は、2006年7月にベラルーシで第2回会議が開かれて以来、19年ぶり。韓国の通信社、聯合ニュースが同通信の報道として伝えたところによると、7日、貿易経済協力共同委員会の本会議に先立ち、部門別会談が行われ、双方の実務幹部が出席。同通信は「今回の会議の議定書に反映する様々な分野での協力実現に向けた具体的な事項について踏み込んだ討論が行われた」と伝えたという。聯合は「今回の会議で、ベラルーシとの経済貿易の成果を軍事力拡大に活用する可能性もある」と伝えた。また、国会議事堂に当たるマンスデ(万寿台)議事堂ではベラルーシ代表団の歓迎宴会が開かれ、チョン・ミョンス内閣副首相、キム・ギョンギュ外務次官ら、関係部門の閣僚が出席したという。

北朝鮮とベラルーシの外交をめぐっては、昨年7月には、ベラルーシの外相が北朝鮮を訪問し、北朝鮮のチェ・ソニ外相と会談。ウクライナ情勢などを念頭に国際情勢について意見を交わし、米国がけん引する世界秩序に対抗するため、友好関係を強化していくことで一致した。ベラルーシ外務省の当時の発表によると、具体的には、医療や教育、農業、文化の分野での関係強化を進めていくことにしたという。ベラルーシの外相が北朝鮮を訪問するのは、1992年に国交を樹立してから、初めてのことだった。

また、今年3月に産経新聞が報じたところによると、北朝鮮は昨秋、ベラルーシ製の鉱山用大型特殊ダンプ車を少なくとも4台輸入した。ベラルーシの大型車両大手、ベラーズ社が製造したものとされる。同紙は「北朝鮮への輸送車両の輸出は国連安全保障理事会の決議で禁止されているが、ダンプ車はロシア経由で北朝鮮に渡ったとみられている」と伝えた。ダンプ車はミサイル発射台などに改造して軍事転用される可能性もあり、懸念されている。

ベラルーシは、東側はロシア、西側はポーランドと接する内陸国で、国土のほぼ全域が低平な東ヨーロッパ平原にある。面積は20.8万平方キロメートル、人口は約944万2000人。首都はミンスク。公用語はベラルーシ語とロシア語だ。ソ連解体を目論み、1991年に結成された国家連合、独立国家共同体(CIS)の創設メンバーで、ロシア寄りの政治と経済が進められてきた。大統領は、1994年から「欧州最後の独裁者」とも呼ばれるアレクサンドル・ルカシェンコ氏が務めている。ルカシェンコ氏は今年1月に行われた大統領選挙で、7期目の当選を果たした。旧ソ連に属していた時代には、日本では「白ロシア」と呼ばれた。

ベラルーシは、ルカシェンコ大統領が同盟国であるロシアへの依存の引き下げを模索する一方、ロシアによるウクライナ侵攻は支持し、実質的な攻撃拠点として協力してきた。

北朝鮮もロシアによるウクライナ侵攻を支援するため、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の命令でロシアに派兵している。金総書記は、今月9日のロシアの対ドイツ戦勝80年の記念日に合わせ、平壌にあるロシア大使館を訪問して祝意を表した。演説もし、「北朝鮮とロシアは不敗の同盟関係を絶えず強化し、発展させていく」と述べ、ロシアとの関係をさらに強化する考えを強調した。

一方、前述のように、北朝鮮政府は、9日まで訪朝したベラルーシの政府代表団と、貿易や機械製作、農業、保健医療などの分野で連携を深めるための議定書に調印した。ロシアとの連携を強化している北朝鮮が、「親ロシア国」のベラルーシとも関係強化を図ろうとしていることが改めて浮き彫りになった形だ。ロシアの同盟国とも関係を深め、米国への対抗で連携を強化したい狙いがあるとみられる。
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