原発輸出はユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領が力を入れて推進してきた。尹氏は世界の原発需要の拡大をにらみ、経済的な効果を狙うとともに、尹政権の前のムン・ジェイン(文在寅)政権で低迷した原発産業の復活を試みようとした。尹氏は2030年までに10基の受注を目標に掲げ、「原発セールス外交」を積極的に展開。昨年9月には、火力発電の割合を減らし、原子力発電の割合を引き上げようとしているチェコを訪問。パベル大統領と原発受注を含む両国の協力強化について議論した。尹氏はパベル氏との当時の会談で、「韓国とチェコが共に建てる原発として、両国の経済成長に寄与する互恵的なプロジェクトになる」と強調した。
チェコは、ドコバニ地域にあるドコバニ原発など4基の建設を推進しており、韓国は同原発の新規建設事業をめぐり、2022年に受注獲得に乗り出した。米ウェスチングハウスとフランス電力公社も受注を目指していたが、韓国水力原子力は価格競争力と工事期間の順守能力をアピール。そして、昨年7月、ドコバニ原発2基の新規建設事業の優先交渉権を得た。
しかし、その過程でライバルだったフランス電力公社が、韓国水力電子力の契約履行能力の不足や、外国補助金規定違反などを問題視。チェコの経済競争保護局に異議申し立てを行った。また、ウェスチングハウスは、韓国水力原子力が知的財産権を侵害しているとして、チェコの反独占規制機関に法的対応と陳情を提起した。
その後、これらの異議申し立てをチェコの経済競争保護局が棄却。韓国は先月、チェコ政府とドコバニ原発の新規建設事業の本契約を結ぶ予定だった。しかし、フランス電力公社は「韓国水力原子力の受注過程に手続き上の問題がある」となおも主張。チェコ第2の都市、ブルノの地方裁判所に契約締結の執行停止を求める仮処分申請を行った。地裁はフランス電力が提訴した行政訴訟の判決が出るまで、韓国水力原子力と発注会社間の最終契約署名を禁止する仮処分を決定した。突然の裁判所の決定を受け、契約式に出席するためにチェコに向かっていた韓国政府代表団は、緊急の対応を迫られた。
だが、チェコのペトル・フィアラ首相は今月4日(現地時間)、「韓国水力電子力とドコバニ原発の最終契約を締結した」と発表した。韓国水力原子力とチェコ電力の子会社との最終契約を禁止する仮処分を、チェコの最高行政裁判所が取り消したことから、契約締結が可能となった。新規原発事業は1000メガワット級のドコバニ5号機、6号機を2036~37年までに建設するもの。受注総額は4000億チェココルナ(約2兆6000億円)に上る。
チェコは10月に総選挙を控えており、先月、最終契約が見送られた際、チェコで野党が勝利するなど状況の変化によっては、契約が無期限に延期される可能性も指摘されていた。しかし、大方の予想よりも早く最終契約に至った。この背景について韓国紙の中央日報は、「チェコ政府は地裁の仮処分命令によって、安定的な電力供給に向けた同国最大規模の事業に支障が生じたとして速やかな判断を促した。原発業界でも事業遅延による金銭的損害とエネルギー供給問題を考慮し、裁判所が早く決断を下すと予想した」と解説。「最高行政裁判所の決定は、チェコ政府と業界の懸念を反映したとみられる」と伝えた。
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