2016年に合併して1つの地方になったブルゴーニュ・フランシュ・コンテ。
合併前からお隣同士、様々な交流がありました。
そんな2つの地域の特産物をフュージョンさせたのが鶏肉のガストン・ジェラール風。
1930年に生まれたこの料理はとり肉(あればブルゴーニュのブランド鶏であるブレス鶏)にディジョンマスタードやコンテチーズ、そして調味料にパプリカを使うのがポイントです。

ガストン・ジェラール氏はブルゴーニュのディジョン市長だった人物。
料理には氏の名前がついていますが、調理したのは彼の妻です。
コンテ地域の観光サイトによると、このレシピが生まれたのはちょっとしたアクシデントが関係しているとか。

ある日ジェラール氏が友人をホームパーティーに招いたため、(最初の)妻、レンヌ・ジュヌヴィエーヴさんはディナーの準備をしていました。
お酒も既に飲みながらキッチンで料理を続けていたら、誤って調味料であるパプリカの瓶を落としてしまいました。
そしてその中身はまさに調理中で焼き色がついてきたとり肉にふりかかってしまったのです。
入れるつもりのなかった調味料に彼女は間違いなく
(しまった!)
と焦ったに違いありませんが、どうやら冷静な判断力の持ち主だったようです。
咄嗟に機転を利かせ、その場に残っていたブルゴーニュの白ワインであるアリゴテを加えました。
更に冷蔵庫にあった生クリームと(文字通りコンテ地域の特産)コンテチーズを加え、オーブンで表面に焼き色をつけることで、両地域の特産物(スペシャリテ)を合わせた新しい料理を誕生させたというわけです。

因みに彼女がとり肉にぶちまけてしまったパプリカは、ジェラール氏がブダペストを旅行した時にお土産として買ってきたものだそう。
またとり肉がブレス産のものだったかどうかは、当時の記録による証拠はないようです。
ジェラール氏が
「ブルゴーニュとフランシュ・コンテの友好を象徴する一品だ」
と友人たちに雄弁に語る様子が目に浮かぶようです。
こうしてミスからの形勢を逆転させて出来た料理はブルゴーニュ・フランシュ・コンテのスペシャリテとして現在しっかり定着しています。

さてディジョン市長といえば、ジェラール氏と前後して複数回任期を務めたキール氏がいます。
アペリティフはカシスリキュールと白ワイン(あればブルゴーニュ アリゴテ)のカクテル、「キール」といきましょう。


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