韓国の出生率は1984年に1.74と初めて2を下回った。2000年代に入ると1.1~1.3を推移し、2018年には0.98と1を割り込んだ。経済協力開発機構(OECD)の加盟国の中で出生率が1を下回っているのは韓国だけだ。2018年以降も歯止めがかからず、2020年には0.84、2021年は0.81、そして昨年、過去最低を更新して0.78となった。これはOECD加盟国の平均(1.59人)の半分にも満たない。地域別では首都ソウルで0.59、第2の都市・プサン(釜山)で0.72と都市部で特に低かった。
韓国統計庁は四半期ベースでも合計特殊出生率を発表している。今年7~9月期のデータが先月29日に公開された。同期は0.70となり、2009年の統計開始以来、四半期ベースで過去最低だった2022年10~12月期と今年4~6月期に並んだ。特に9月に生まれた子供の数は約1万8700人と、前年同月比14.6%減となった。聯合ニュースは「出生数は年末に近づくにつれ減る傾向があり、10~12月期の合計特殊出生率は0.7を切る可能性がある」と伝えている。
少子化がここまで進んだのは、結婚する人が減ってきたことが最大の要因とされる。超学歴社会、就職難の韓国において、激しい競争の末に格差は広がり、経済的不安から結婚や出産に踏み出せないケースも少なくない。韓国では2000年代半ばに恋愛、結婚、出産を諦める「3放」という言葉が生まれた。韓国には依然、子育ては母親が行うものという考えが残っており、結婚すれば子育てに家事と、負担を一挙に背負うことになるのではとの懸念から、結婚を躊躇(ちゅうちょ)する女性もいる。また、ライフスタイルが多様化し、結婚をしない選択をする女性もおり、それも一つの価値観として尊重すべき時代になっていることも事実だ。
韓国で少子化が大きな社会問題として浮上したのは2000年代はじめからだ。2003年に発足したノ・ムヒョン(盧武鉉)政権から少子化対策に本腰を上げて取り組むようになった。尹政権も、少子化対策として低家賃の公営住宅の建設や移民の受け入れなどを掲げ取り組んでいるが、少子化は一向に歯止めがかからない。
こうした中、韓国メディアは、今年国内においてペット用カート(犬用ベビーカー)の売り上げ台数がベビーカーを上回ったと伝えた。eコマース企業「Gマーケット」によると、ペットカートと乳幼児用ベビーカーの合計売上台数を100とすると、今年1~9月は57%対43%という結果になったという。2021年はペットカートとベビーカーの売り上げ台数の割合は33%対67%、昨年は36%対64%で ベビーカーの方が多く、今年は9月までの集計結果ではあるものの、逆転したことが分かる。韓国紙の朝鮮日報によると、Gマーケットの関係者は「通常、1月~9月までに販売されるベビーカーなら少なくとも5000台以上は売れただろう」とし、その要因として、ペットブームにより飼い犬の数が急増したことを挙げたほか、「少子化により出生数が減っているためとみられる」と分析した。
韓国の少子化対策はまったなしの状況で、尹大統領も26日の閣議で、関係省庁に対し、強い覚悟をもって対策に取り組むよう指示した。多くの若者たちからは、私教育費の負担、雇用環境と労働環境の悪化が出産をためらう要因なっているとの声が聞かれる。そのため、尹政権は少子高齢化解決の中核とされる、労働、教育、年金の「3大改革」に取り組んでいる。聯合ニュースによると、尹大統領はこの日の閣議で、多くの専門家が指摘するように、教育をはじめとする過度な競争システムが少子化の原因となっているならば、これを是正することに集中すべきと強調した。また、出産に対するインセンティブを確かな少子化対策とするためには、一般的な支援だけでなく、実証的な分析によって必要な支援を確実に行うべきだと指摘した。
韓国では、このまま出生率が反転しない場合、2040年には14歳以下の人口が2020年の半分になるとの予測も出ている。
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