<W解説>韓国・与党の元代表が離党し新党結成へ=総選挙に向け第三の勢力になり得るか?
<W解説>韓国・与党の元代表が離党し新党結成へ=総選挙に向け第三の勢力になり得るか?
韓国の与党「国民の力」の元代表のイ・ジュンソク(李俊錫)氏が今月27日、同党からの離党を表明した。また、来年4月の総選挙に向け、新党を結成する考えを併せて示した。「国民の力」は最近、党トップにユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の側近を起用。総選挙で勝利し、議会権力を奪還するため「党政一心同体」の体制づくりを進めている。一方、最大野党「共に民主党」は政権奪還に向け、総選挙で圧倒的勝利を収め、尹政権を追い込みたい考えだ。こうした構図の中で、李氏が立ち上げる新党が、今後、第三勢力になり得るのか注目される。

李氏は2021年6月、国会議員経験がないまま当時36歳の若さで同党代表に就任し、注目を集めた。米ハーバード大でコンピューター科学と経済学を学び、卒業後はIT(情報技術)系のベンチャー企業を立ち上げた。2011年にパク・クネ(朴槿恵)元大統領から「国民の力」の前身、ハンナラ党の非常対策委員会委員に抜てきされ政界入りするも、2016年の総選挙、2018年の国会議員補選、2020年の総選挙でいずれも落選。議員経験がないまま2021年の党代表選で勝利し、韓国の主要政党では初となる30代の党代表となった。

党代表就任直後から「われわれは大統領選で勝利する」と宣言。昨年の大統領選当時、同党公認候補だった尹大統領は「李俊錫氏に選挙運動の全権を委ねたい」「30代の党代表と共に大統領選挙を戦うことになったことは候補として大きな幸運だ」と述べるなど、李氏に信頼を寄せた。

選挙の遊説で、両者は記者団の前にそろいの赤いパーカーで登場したこともあった。尹氏は「李代表が企画したものを全面的に受け入れ、この服を着て走れと言われれば走り、どこかへ行けと言われれば行くだけ」と李氏と一心同体であることをアピールしていた。

しかし、尹氏の側近らと対立したことが原因で、2021年12月、李氏は選挙対策委員長を辞任。李氏は当時、「選対委の構成員が選対委員長の指示に従わないということは、選対委の存在を否定すること」と尹氏の側近を批判した。

しかし李氏は党代表職にはとどまり、尹氏が大統領選に勝利したことから政権与党の代表となった。だが、李氏には過去に性接待を受けた後に証拠隠滅を教唆したとする疑惑が取り沙汰され、昨年7月、同党の党員倫理委員会は、内部規定により党員として品位維持義務を守らなかったとの理由で李氏を党員資格停止6か月とする懲戒処分を議決した。これにより、李氏は党代表としての職務執行権限が停止された。李氏は処分を不服としたが、代表を解任された。さらに、党中央倫理委員会は李氏が尹大統領や党に対する非難を繰り返したとして、その後、李氏への資格停止処分を1年追加した。李氏は党員資格停止期間中の今年6月、党代表の任期満了を迎えた。処分は来年1月に解除される予定だったが、同党は今月2日、先月末に発足した革新委員会の提案を受け、李氏への処分を取り消すことを決めた。

こうした中、李氏は最近、新党結成を目指した動きを活発化させていた。そして27日、ソウル市内で記者会見を開き、「国民の力」を離党し、新党を結成することを明らかにした。李氏は会見で「非常事態に置かれているのは党ではなく韓国だ。変化のない政界を見つめながら待つことはできない」と既存政治の変革を訴えた。

李氏が立ち上げる新党が、今後、総選挙に向け「国民の力」でも「共に民主党」でもない、第三の選択肢となりうるか注目される。世論調査会社の韓国ギャラップが今月5~7日にかけて全国の18歳以上の1000人を対象に行った世論調査では、総選挙で「政府をけん制するために野党が勝利すべきだ」と答えた人は51%で、「政府を後押しするため、与党が勝利すべきだ」と答えた人(35%)を上回った。先月行われた同様の調査では「野党が勝利すべき」が46%、「与党が勝利すべき」が40%で、その差は6ポイントだったが、1か月後に16ポイントに広がったことになる。一方、李氏の新党結成を肯定的に捉えた人の割合は32%にとどまった。

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