北朝鮮では先月26日~30日まで朝鮮労働党中央委員会総会が開かれた。北朝鮮は2019年以降、金総書記の出席のもとで年末に総会を開き、一年を総括しつつ、新年の政策方針を示している。
総会で、金総書記は南北関係に言及し「現在、朝鮮半島に最も敵対的な2つの国家が併存していることは誰も否定できない」とし、韓国は政権交代しても「『自由民主主義体制下の統一』基調は変わらなかった」と批判した。さらに金総書記は韓国との関係について「同族という修辞的表現のために、米国の植民地の手下に過ぎない怪異な輩と統一問題を議論することは、我々の国の格と地位にふさわしくない」とし、「南北関係はもはや相続関係ではなく、敵対的な2つの国家関係、戦争中の2つの交戦国関係に完全に固着した」と述べた。
北朝鮮は昨年の夏頃から韓国を批判する際、「大韓民国」と表現することが増えた。北朝鮮が公式に「大韓民国」の呼称を使用したのは昨年7月に金総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)党副部長が相次いで発表した談話で用いたのが最初で、従来使用していた「南朝鮮」、「(米国の)かいらい」から表現を変えた意図に注目が集まった。当時、与正氏は米空軍の偵察活動を非難する談話を発表し、「大韓民国の合同参謀本部」、「大韓民国の軍部」との表現を用いた。発表された談話は、大韓民国とした部分がカッコでくくられ、強調されていた。
また、翌月には金総書記が海軍創建記念日を前に海軍司令部を訪れて演説した際、「つい先日まで米国、日本、≪大韓民国≫のごろつきの頭たちが集まり、3者による合同軍事演習を定期的に行うことを公表し、その実行に着手した」と述べた。金総書記が公の場で韓国を「大韓民国」と呼称したのはこれが初めてのことだった。
与正氏に続き、金総書記も「大韓民国」との表現を用いたことに当時、韓国や海外メディアも注目した。韓国紙の朝鮮日報は当時、「南北関係における特殊性を考慮せず、核の使用も辞さない『国対国』の関係と認識したものと解釈できそうだ」と分析した。また、前述の金総書記の発言内容が北朝鮮メディアで報じられた際、≪大韓民国≫とカッコでくくられ表記されたことに、韓国メディアのニュース1は当時「≪≫の表記は、北朝鮮が通常、自分たちでは使わない言葉を表現する際に使う方法」とし、あえて自分たちが使わない国名で韓国を呼称し、「敵対感情を表している」と解説した。1992年発効の南北基本合意書は、南北関係を「国と国ではない統一を志向する過程の特殊関係」と記しているが、韓国を「統一の対象である同じ民族」ではなく、「別の国家」とみなし、南北関係に明確な線を引いて、特殊な関係から国家間関係へと統一政策を変えようとする意図があるとの見方が広がった。
今回、総会で金総書記が「同族関係ではなく敵対的な国家関係」と述べたことについて、韓国紙の東亜日報は「対南、対米、『強対強』の敵対路線を明確にしたものだ」と解説した。金総書記の祖父、キム・イルソン(金日成)主席は南北の政治体制を共存させて連邦形式で統一を図ろうと「高麗民主連邦共和国案」を提唱したが、朝鮮日報は今月1日付の社説で金総書記の今回の発言は「先代の首領らによる統一の遺訓『高麗連邦制』の破棄をも示唆」したものだと指摘。韓国政府に対し「対北朝鮮政策と統一政策は、北朝鮮の実態を冷徹に把握することから始めなければならない」と主張した。
一方、韓国の尹大統領は新年の演説で、今年6月までに米国が核と通常戦力、ミサイル防衛などで韓国を防衛する「拡大抑止」の強化を完成させると表明。「北の核・ミサイルの脅威を根本的に封鎖する」と対抗姿勢を強調した。
韓国ではキム・デジュン(金大中)、ノ・ムヒョン(盧武鉉)政権下で対北緊張緩和政策「太陽政策」を取ってきた。ムン・ジェイン(文在寅)政権も融和路線を敷いてきた。しかし、高まる一方の現在の緊張した南北関係に、韓国メディアからは「『太陽政策』は初めから幻想だった」(朝鮮日報)との指摘も出始めている。
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