朴氏は2022年5月に発足したユン・ソギョル(尹錫悦)政権の初代外相に指名された。ソウル大学出身で、東京大学にも1年間の留学経験があり、日本語の堪能な人物として当時日本メディアでも紹介された。外交官出身で、2001年に政界入り。現与党の「国民の力」に所属し、党内きっての「米国通」とされ注目が集まった。尹氏は朴氏を外相に指名した当時、「対米外交に精通するなど豊富な経験があり、膠着(こうちゃく)した韓国外交の正常化に大きく貢献してくれると判断した」と期待を示していた。
当時、日本は林芳正氏が外相を務めており、韓国メディアは「音楽好き」という両氏の共通点を紹介した。朴氏は大学時代にバンドを組み、キーボーディストとして活動してきた。一方、林氏もバンドマンとして知られる。朴氏は外相就任前の2022年4月、「音楽好き」という林外相との共通点を知る記者から「林外相と共演するならどんな曲にするか」と問われ、「私が知る林外相は音楽に造詣が深い方」とした上で、「今の韓日の間には不協和音が多い。これを解消するために、もし韓日が外相間で音楽共演することになれば、『釜山港へ帰れ』がどうかと思う」と答えた。
2022年5月に発足した尹政権は日韓関係の改善を図る方針を示したが、当時はまだ両国の関係がギクシャクしていたことから懐疑的な見方もあり、外相に就任した朴氏に注目が集まった。
同年7月、朴氏は就任後初めて日本を訪問し、林氏と会談した。正式な日韓外相会談が開かれたのは約2年半ぶりのことだった。林氏は「元徴用工問題をはじめとする日韓間の懸案の解決が必要だ」と韓国側に具体的な行動を要求。これに対し朴氏は、元徴用工訴訟について「(日本企業の資産)現金化が行われる前に望ましい解決策が出るよう努力する」と応じた。
尹政権は、日韓最大の懸案とされた元徴用工訴訟問題から着手。解決に向け「官民協議会」を発足させた。しかし、この協議会は当初加わっていた原告側が途中から不参加となるなど難航した。
解決への見通しが立たぬ中、尹大統領は2022年8月、就任100日目に合わせて開かれた記者会見で元徴用工問題について言及。「原告が補償を受けられる方法を考えている。私は肯定的に見ている」と述べ、その内容が注目された。
昨年3月、韓国政府はこの問題の解決策を発表した。その内容は、元徴用工を支援する韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、元徴用工らへの賠償を命じられた日本企業に代わって遅延利子を含む賠償金相当額を原告らに支給するというもの。当時、解決策を発表した朴氏は、経済や安全保障など、あらゆる分野で日韓協力が非常に重要だとし、「長時間硬直した関係を放置せず、国益の観点から国民のために悪循環の輪を断ち切るべきだ」と述べた。その上で、日本に対し、「過去の不幸な歴史を克服し、和解と善隣友好協力に立脚した未来志向的関係を発展させていくため、共に努力することを望む」と述べた。一方、日本の林外相(当時)は解決策について「日韓関係を健全な関係に戻すものとして評価する」とした。
韓国側が解決策を示したのを機に両国の関係は劇的に改善。現在、経済、民間の交流も活発化している。昨年10月にはイスラエル軍とイスラム組織「ハマス」との武力衝突が続く中、韓国軍の輸送機がイスラエルからの日本人の出国を支援した。11月には、日韓関係の悪化も一因となって開催できずにいた日中韓外相会談が4年ぶりに開かれた。
朴氏は今年4月に実施される総選挙への出馬が有力視されており、近く外相を退任する。今月5日には、退任を前に上川陽子外相と電話会談した。聯合ニュースによると、朴氏は能登半島地震を受けお見舞いのメッセージを伝えた。また両氏は、これまで緊密に意思疎通し、両国関係の発展のために取り組んできたことを評価。今後も協力を続けることで一致した。
先月19日、尹大統領は新外相候補にチョ・テヨル元国連大使(68)を指名した。チョ氏は通商や多国間外交に精通したベテラン外交官。「厳しい対外環境を切り抜け、国家の安全保障と繁栄の土台をさらに強固にするために努力を尽くす」と話している。朴氏がこれまで担ってきた日本や米国との協力を優先する尹政権の外交路線はそのまま引き継がれる見通しだ。
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