インタビューで尹氏は、日韓関係に関して「既に復元され、今は未来に向けて進んでいるところだ」との認識を示した。日韓最大の懸案とされてきた元徴用工訴訟問題をめぐっては、韓国政府が昨年3月、解決策を発表した。その内容は、元徴用工を支援する韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、元徴用工らへの賠償を命じられた日本企業に代わって遅延利子を含む賠償金相当額を原告らに支給するというもの。韓国政府がこの解決策を発表した際、尹氏は「これまで政府が、被害者の立場を尊重しながら韓日両国の共同利益と未来発展に符合する方法を模索した結果だ」と強調した。
この解決策が示されて以降、日韓関係は改善に向かい、現在は政治のみならず、経済、そして両国民同士の往来、交流が活発化している。
財団はこれまでに、元徴用工訴訟で勝訴した原告ら15人のうち、生存している原告の1人と10人の遺族に賠償金相当額の支給を完了した。しかし、残りの原告と遺族の計4人は日本企業による謝罪や賠償を求めて受け取りを拒否している。また、同種の訴訟では原告の訴えを認め、日本企業が敗訴する大法院(最高裁)判決が相次いでいる。今後も日本企業に賠償を命じる判決が続くことが予想される中、財団による支給の財源が足りなくなる可能性も指摘されている。
7日のインタビューで尹氏は「韓日関係の正常化を望む両国の企業家たちの協力」も求めた。尹氏は具体的な言及は避けたが、日本企業にも財団への資金を拠出することなどを期待しての発言との見方も出ている。しかし、日本政府は戦後の補償問題に関しては、1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場を取っている。
また、尹氏は北朝鮮についても言及。「合理的・理性的ではない勢力のため、韓国の安全保障を脅かす挑発を加える時も不合理で非理性的な結論を出しかねない勢力だ」と述べた。関係が冷え込む中で、南北首脳会談の可能性については「北が核を放棄するかどうかに関わらず、行うことができる」とする一方、トップダウン方式は困難との認識を示した。
対中関係については、「韓国と中国間の基本的なそれぞれの国政基調・対外関係基調は異なっていない」とした。習近平国家主席が今年訪韓する可能性があるかについては即答を避けた。
また、今回のインタビューで尹氏は、夫人であるキム・ゴンヒ(金建希)氏が高級ブランドバッグを受け取ったとされる疑惑についても初めて言及した。疑惑は金氏が在米韓国人の牧師から高級ブランドバッグを受け取ったとされる場面の隠しカメラの映像が昨年11月に公開されて浮上した。映像は2022年9月のものとされ、金氏が運営する芸術イベント企画会社内で撮影されたとみられている。韓国では公務員やその配偶者が職務と関連して一定額以上の金品を受け取ることを禁じる「不正請託防止法」があり、同法違反の疑いが指摘されている。
尹氏は、「(金夫人が)はっきり断れなかったことは問題と言えば問題だ」と指摘した一方、この問題は隠しカメラを使った「政治工作」であると強調。その上で、「政治工作かどうかが重要ではなく、今後このようなことが発生しないようにはっきりと線を引くことのほうが重要だ」と述べた。
尹氏へのインタビューは今月4日に大統領室内で収録され、7日の午後10時に放送された。新年に際しての国民へのメッセージ発信を、公共放送KBSという特定のテレビ局を通じて行ったことに批判が出ている。韓国紙のハンギョレは「事前、事後の調整が可能な対談の放送で、国民との意思疎通義務を代替できると考えているとしたら、大きな錯覚だ」と指摘した。また、尹氏は2022年8月に、大統領就任100日に合わせて記者会見を開いて以降、約1年半にわたって会見に応じていない。今月2日に世論調査会社の韓国ギャラップが発表した調査結果では、尹氏の支持率は29%と、9か月ぶりに30%を下回った。中央日報は「大統領が自分に楽な道を歩けば、支持率を回復することは難しい」と指摘した。
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