尹氏は2022年3月の大統領選に当選し、同年5月10日、韓国の第20代大統領に就任した。国会議員経験のない大統領として、既成政治のしきたりを破り、理念にとらわれない実用主義路線を取るものと期待された。尹氏の支持率は就任直後の同月の第2週には52%に達したが、その3か月後の8月第1週には24%まで下落した。昨年はおおむね30%台を維持した。
先月10日の総選挙は、尹政権の「中間評価」と位置付けられたが、尹政権を支える与党「国民の力」が108議席、最大野党「共に民主党」が175議席を獲得する結果となり、「国民の力」は大敗した。野党勢力は、憲法改正案や大統領の弾劾を求める議案を可決できる200議席には届かなかったが、引き続き、政局の主導権を握る。
尹氏の政権運営はこれまで「独善的」との批判があった。しかし、大敗を受けて、野党との協力がこれまで以上に求められることになった。先月29日、尹氏は「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表と大統領府で会談した。両者の会談が行われたのは、尹政権の発足以来、初めてのことだった。李代表は2022年8月に代表に就任して以来、尹氏に対し、繰り返し会談を提案してきたが、尹氏は応じてこなかった。
会談後、大統領府は「野党との意思疎通を通じた政治協力の第一歩を踏み出した」と評したが、「共に民主党」の報道官は「大きな期待をしていたが、(尹大統領の)変化が見られなかった。状況認識があまりにも安易で今後の国政が懸念される」と批判した。両氏は今後も継続的に対話を重ねていくことで一致したが、会談で李代表から示された様々な要求に対し、尹氏がどこまで譲歩するかが今後のカギになるとみられている。
そして、今月9日、尹氏は翌日で就任から2年になるのを前に、大統領室で記者会見した。尹氏が公式の記者会見に臨むのは2022年8月以来で、「対話重視」への転換をアピールする狙いがあったものとみられる。尹氏は総選挙で「国民の力」が大敗したことに関連し、「国民の生活を改善する政府の努力が不足していた」と反省を口にした。残り3年の任期では経済の改善を重視するとした。会見の内容については与野党で評価が分かれ、「国民の力」は「全ての懸案に素直で虚心坦懐な見解を聞くことができた」と評価する一方、「共に民主党」は「国民の誰も共感できない自画自賛で溢れた」と痛烈に批判した。
尹氏の支持率は総選挙後に実施された韓国ギャラップの調査(4月16~18日)で、就任後最低の23%を記録。そして、就任から丸2年となった今月10日に発表された結果(調査は7~9日に実施)では24%だった。韓国ギャラップによると、就任2年時点での支持率としては1987年の民主化後の歴代大統領の中で最も低いという。同時点でのこれまでの最低はノ・テウ(盧泰愚)大統領の28%(1990年2月)だった。尹氏を支持しない理由は「経済・国民生活・物価」(19%)で最も多く、「コミュニケーション不足」(15%)、「独断的・一方的」(7%)などと続いた。一方、韓国ギャラップは「(9日に行われた)尹大統領の就任から2年を前にした記者会見は、今回の調査の最終日に行われたため、記者会見に対する世論の反応が今回の調査に完全に反映されたとは言えない」と補足した。
しかし、尹氏は国民の厳しい評価のもとで3年目をスタートすることとなり、国会で議席の過半数を占める野党が諸懸案に追及を強める中、いばらの道は続きそうだ。
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