<W解説>韓国で「宇宙航空庁」が発足、世界5大宇宙強国に台頭できるか?
<W解説>韓国で「宇宙航空庁」が発足、世界5大宇宙強国に台頭できるか?
韓国の航空宇宙分野の政策や研究開発などを担う宇宙航空庁が先月27日、発足した。米航空宇宙局(NASA)の韓国版の位置づけで、2045年に世界5大宇宙強国に飛躍するとしている。

宇宙航空庁の設立はユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の公約の一つだ。尹大統領は2022年11月に「未来宇宙経済ロードマップ(行程表)」を発表。月、火星探査、宇宙人材の養成、宇宙安全保障の実現など、「宇宙強国」に飛躍するため、2045年までの6つの政策方向と支援策を示した。32年に月、45年に火星に自力で宇宙船を着陸させるとする具体的な目標も掲げられている。

このロードマップに沿うように、韓国は近年、宇宙事業で成果を上げている。2022年8月には韓国初の月探査機「タヌリ」が米フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍施設から打ち上げられ、成功した。同年12月には月の周回軌道に入り、月探査ミッションが始まった。昨年5月には自国開発のロケット「ヌリ」が初めて実用衛星を搭載して打ち上げられ、衛星を周回軌道に乗せることに成功した。当時、尹大統領は「韓国が宇宙強国G7(主要7か国)に仲間入りしたことを宣言する快挙」と歓喜。「独自製作した衛星を、独自製作した発射体に搭載して宇宙軌道に乗せた国は米国、フランス、日本、ロシア、中国、インドだけだ」とし、「全世界で大韓民国の宇宙科学技術と先端産業に対する見方が大きく変わるだろう」と期待を示した。

そして今年1月、宇宙航空庁設立に関連する3つの法案(「宇宙航空庁設立および運営に関する特別法案」「宇宙開発振興法一部改正法律案」「政府組織法一部改正法律案」)が国会を通過した。法案では、宇宙航空庁を科学技術情報通信部(部は省に相当)所属の中央行政機関として設置し、宇宙航空政策、研究開発、産業育成、民間・軍の協力、国際協力などを担当するとした。

先月27日、宇宙航空庁が南部のキョンサンナムド(慶尚南道)・サチョン市で開庁し、同日、発足式が開かれた。同庁が庁舎を構える同市には、韓国唯一の航空機メーカー「韓国航空宇宙産業」の本社と工場がある。この日の発足式も同社で開かれた。発足式であいさつした尹大統領は、「宇宙航空産業のエコシステムを重点支援し、専門性を持つ人材を育成することで『ニュースペース時代』を切り開いていきたい」と述べた。その上で、2032年に月面に探査機を着陸させ、45年には火星に韓国の国旗の太極旗を立てる事業を推進する計画を改めて示した。また、宇宙航空庁の開庁日である5月27日を国家記念日の「宇宙航空の日」とする方針を明らかにした。

尹大統領は欧州の宇宙航空産業の中心都市であるフランスのトゥールズになぞらえ、宇宙航空庁が庁舎を構えるサチョン市を「先端宇宙科学技術の中心に世界の優秀な人材が集まる『アジアのトゥールズ』に育てる」と意気込みを語ったが、課題もある。専門の人材が集まりやすい首都圏とは異なり、人材確保に苦慮している。政府は同庁の人員を300人とすることとし、3月から始めたが、目標の人数を確保できていない。慶尚南道とサチョン市は職員や家族に支援金の支給を決めるなど、手厚い定住支援策で優秀な人材を迎えようとしている。

また、宇宙航空分野における開発競争で既に韓国はアメリカに10年、中国には5年以上遅れを取っているとされ、「世界5大宇宙強国」を目指すにあたっては、国を挙げての支援が不可欠だ。尹大統領は開庁式で、2027年までに宇宙開発予算を1兆5000億ウォン(約1700億円)以上にまで拡大し、45年までに約100兆ウォンの民間投資を誘致する考えを示した。

また、宇宙航空庁は今年、宇宙開発関連の研究に7000億ウォンを投じる計画で、ユン・ヨンビン庁長は「宇宙航空庁の設立は、民間主導による宇宙産業エコシステムの構築を通じて、わが国を本格的な宇宙経済強国へと導く土台となるだろう」と自信を示している。

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