1~9月の訪韓外国人客数は1214万人となり、前年同期比べ58.7%増となった。コロナ禍前の2019年1~9月と比べても94%まで回復。コロナ禍前の水準に戻ったと言える。韓国観光公社は「ポジティブな訪韓の流れを継続するため、様々なマーケティング活動と観光インフラの改善を引き続き推進する」としている。
韓国政府は2027年までに訪韓外国人観光客数を3000万人、観光収入300億ドル(約4兆6,371億6,000万円)達成を目指している。団体から個別、ショッピングから文化体験中心へと観光トレンドが変化しており、消費促進が主要課題となっている。
韓国政府は入国手続きの簡素化など、従来の制度の改善を進めている。日本とは、相互の国民の往来が活発化していることを踏まえ、双方の国を訪れる観光客が入国審査を出発地で事前に行う「プレクリアランス(事前入国審査)」制度をそれぞれ導入することが検討されている。「観光客首都圏偏重現象」を解消するため、地域観光の活性化に向けた取り組みも進めており、地域観光商品の新規開発や、地方空港と海外都市間の直航路線の拡大などを推進している。
前述のように9月の訪韓外国人観光客数は前年同月比33.4%増となった。国別の9月の訪韓客数トップは中国で42万3000人。これに、日本(31万1000人)、台湾(12万6000人)、米国(11万人)、ベトナム(4万5000人)の順で続いた。
2019年9月と比較すると、日本が23.7%増、台湾22.7%増、米国20.8%増、ベトナム2.4%増と、各国からの訪韓客が増えた一方、タイ人観光客数は1万8868人で47.6%減となった。前年同月比でも20.3%減少した。
タイからの訪韓客の減少は、2021年9月に韓国法務部(法務省に相当)が「電子渡航許可制度(K-ETA)」を導入したことに端を発しているとみられている。入国前にオンラインで必要事項を入力し、入国許可を受ける制度で、入国ビザが免除されている国籍の渡航者に対し、K-ETAの取得を義務付けている。日本など22か国、地域はK-ETAの適用を免除されているが、タイからの訪韓には義務付けられ、制度導入後、出入国審査でタイ人が明確な基準なしに入国拒否されるケースが相次ぐようになった。韓国ではタイ人の不法滞在が問題となっており、そのために入国が厳格化されたものとみられているが、明確な理由なしに入国拒否されるケースも多数あり、タイでは反韓感情が高まった。SNSでは、ハッシュタグ「Ban Korea(バンコリア・韓国禁止)」が流行した。
韓国の最大野党「共に民主党」のカン・ユジョン議員が韓国観光公社から提出を受けた「K-ETA施行以降の年間団体訪韓観光キャンセル状況」によると、昨年はタイで少なくとも91の団体、計9947人が計画していた韓国旅行を断念した。タイ国旅行代理店協会(TTAA)の会長は今年6月、「韓国旅行拒否運動が起こる前、韓国はタイで人気旅行先トップ3の一つだったが、そうした時期はもう終わった」と語った。実際、コロナ禍前まで、タイは東南アジア諸国の中で訪韓観光客数1位の国だった。しかし、今やベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポールに押され、6位に転落した。
文化体育観光部(部は省に相当)は、タイ人観光客の誘致を目指し、法務部に今年末までのK-ETAの一部免除を要請したが、受け入れられなかった。法務部は不法滞在を防ぐために必要な措置であり、タイ人に対する差別ではないとしている。
タイ人は、入国規制が厳しい韓国を避けて、日本など他の旅行先に足を向けているという。前出のタイ国旅行代理店協会の会長は、前述の発言の際、「韓国がタイ人観光客の信頼を取り戻すには、少なくともさらに1~2年かかるだろう」と指摘した。
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