<W解説>早くも2回、対面で会談した石破首相と韓国・尹大統領=日韓関係盤石アピールも両首脳には不安定要素
<W解説>早くも2回、対面で会談した石破首相と韓国・尹大統領=日韓関係盤石アピールも両首脳には不安定要素
石破茂首相と韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は今月15日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて訪問したペルーで会談した。先月に首相に就任した石破氏が尹氏と会談するのは先月10日に続き2回目。来年の日韓国交正常化60年を見据え、日韓関係が盤石なものであることを印象付けた形だが、石破政権は先月の衆院選で与党が過半数割れとなったことから基盤が弱く、外交力を十分に発揮できるか未知数だ。尹大統領も支持率低迷に悩まされており、野党から「日本寄り」との批判も受ける中での対日外交を余儀なくされている。

9月に行われた自民党総裁選で石破氏が新総裁に選出された際、韓国メディアは石破氏について、おおむね肯定的に伝えた。公共放送KBSは当時、石破氏について「自民党内では右翼性向の議員とは異なる『ハト派』的な歴史認識を示してきた点が特徴的で、太平洋戦争のA級戦犯を合祀している靖国神社への参拝に対しても否定的な考えを示している」と紹介した。また、「韓日関係が悪化した時にも、関係改善に積極的な意志を示してきた」とした上で「このため、尹錫悦大統領と岸田首相の間で大きく改善した韓日関係が、少なくとも両国間の歴史問題のために悪化することはないとの見方が出ている」と報じた。

また、東亜日報は当時、「保守強硬派だった安倍氏(安倍晋三元首相)と対立し、非主流派だった石破氏は、自民党の有力政治家の中で韓日関係に比較的前向きと評価されてきた」とした上で、総裁選の決選投票で石破氏に敗れた高市早苗氏と比較し「靖国神社参拝を公言した右翼性向の高市氏と比べると、穏健派だ」と紹介した。

しかし、先月の衆院選で与党過半数割れとなると、韓国メディアからは今後の日韓関係を不安視する論調の記事も目立ち始めた。当時、選挙結果を伝えたKBSは「石破総理大臣は、歴史問題などで韓国寄りの姿勢をとっていたことから、就任を受けて韓国国内で期待が高まっていたが、今回の衆議院選挙で与党が15年ぶりの過半数割れとなり、石破総理の責任論が浮上していることから、韓日関係においても悪材料となるのではないかとの懸念が出ている」と報じた。

日韓関係は岸田文雄前首相と尹大統領の間で大きく改善した。石破首相としても両国の関係性を一層強固なものにしたい考えで、16日には石破氏が首相に就任後、早くも2度目となる日韓首脳会談がペルーで行われた。

会談の冒頭、石破氏は「最近の北朝鮮の動きも含めた厳しい安全保障環境を踏まえ、日韓、日韓米の協力を継続的に強化していくことが重要だ」と述べた。これに対し、尹氏は「日韓の緊密な連携が重要になっている今、こうした会談には格別な意味がある」と応じた。

両首脳は、北朝鮮が核・ミサイル開発やロシアとの軍事協力を進展させていることに「深刻な懸念」を共有。米国を含め緊密に連携して対応する方針を確認した。また、来年の日韓国交正常化60年に向け、関係を未来に向けてさらに飛躍させていくことでも一致した。

会談は予定をオーバーして約50分間行われた。会談後、石破氏は記者団に対し、「相当、突っ込んだ話ができた」と成果を強調。国交正常化60年を前に「安全保障だけにとどまらず、首脳同士の話し合いを深化させていきたい」と述べた。

石破氏は日韓に依然またがる懸案の解決も図りつつ、日韓関係をさらに発展させていきたい考えだが、両国のメディアからは今後を不安視する記事も出ている。産経新聞は「衆院選で与党過半数割れとなった首相の政権基盤は弱く、尹政権も低支持率にあえぐ。来年国交正常化60年を迎える日韓関係にとって両首脳自身が不安定要因となっている」と指摘した。また、韓国の聯合ニュースは、日韓関係に加え、日米韓3か国の協力体制に着目した。「(日韓)両国関係の背景とされる韓米日の協力体制も米国の政権交代で変化を迎えている」とし、「バイデン大統領は韓米日、米英豪3か国の安全保障の枠組み『オーカス』、米日豪印4か国の協力の枠組み『クアッド』など多国間協力を重視したが、トランプ次期大統領が来年1月に就任すればどのような変化が生じるか不透明だ」と指摘した。
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