<W解説>石破首相が来年1月に訪韓?日韓国交正常化60周年の年初に道筋示せるか
<W解説>石破首相が来年1月に訪韓?日韓国交正常化60周年の年初に道筋示せるか
石破茂首相が来年1月上旬にも韓国を訪問し、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と会談する方向で調整に入ったと、日本の複数のメディアが報じた。日韓関係をめぐっては、先月24日に新潟県佐渡市で開かれた、世界遺産「佐渡島の金山」の追悼式に韓国政府関係者が急遽参加を見送るなど、歴史問題がくすぶっている。だが、石破氏は先月27日、韓国の超党派の国会議員でつくる韓日議員連盟と面会し、「日韓両国で考え方の違いはあるが、未来に向けて関係を発展させていきたい」と述べた。毎日新聞は、石破氏が来年1月に訪韓する方向で調整していることについて「岸田文雄前首相と尹氏が再開させた、首脳が双方の国を頻繁に行き来する『シャトル外交』を引き継ぐことで、日韓両国の緊密な連携が継続しているとアピールする狙いがある」と報じた。

「戦後最悪」と言われた日韓関係は、2022年5月に尹氏が大統領に就任したことで改善に向け動き出した。昨年3月には尹政権が、日韓最大の懸案だった元徴用工訴訟問題の解決策を発表。これを機に岸田前首相も関係立て直しに注力し、昨年3月に、「シャトル外交」が約12年ぶりに再開した。その後も両氏は首脳会談を重ねた。また、日韓間では政界のみならず、経済、スポーツ、そして民間同士の交流も活発になった。

来年は日韓国交正常化60周年の節目となり、両国政府は一層の連携強化を図ろうとしている。10月に首相に就任した石破氏も、岸田氏が尹氏と築き上げた関係を継続していく考えで、就任後、これまでに早くも2回、尹氏と会談している。先月15日には、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて訪問したペルーで会った。会談後、石破氏は記者団に対し、「相当、突っ込んだ話ができた」と成果を強調。国交正常化60年を前に「安全保障だけにとどまらず、首脳同士の話し合いを深化させていきたい」と述べた。

10月、11月と2回にわたる首脳会談は石破、尹政権間でも日韓の良好な関係に変わりがないことを印象付けた。しかし、新潟県佐渡市の世界文化遺産「佐渡島(さど)の金山」に関連し、先月25日に開かれた、金山で犠牲の朝鮮半島出身者を含む全ての労働者の追悼行事に韓国政府関係者が急遽、欠席した。韓国政府は不参加を決定した理由について、式での追悼の辞などが世界遺産登録に賛成するにあたって日本と合意していた水準に満たなかったためとしている。「佐渡島の金山」は今年7月に世界遺産登録されたが、韓国政府は同金山は朝鮮半島出身者が強制労働させられた歴史があるとして、一時、登録に反対の立場を示していた。

韓国側の式のボイコットは、日韓の歴史認識をめぐる問題の根の深さを改めて浮き彫りにしたが、岩屋毅外相は先月26日、G7(主要7か国)外相会合に出席するために訪れたイタリアで、招待国として参加していた韓国のチョ・テヨル外交部長官と会談し、追悼式をめぐる問題が両国の関係に影響を与えないようにすることで一致した。岩屋氏は会談後、記者団の取材に「様々なレベルでこれからも緊密に意思疎通していくことを確認した」と話した。

こうした中、石破首相は来年1月の通常国会召集前に訪韓する方向で調整していることが分かった。石破氏は10月に首相に就任して以来、これまで、アジア太平洋経済協力会議(APEC)などの国際会議に合わせて2回、海外出張したが、2国間外交を目的とした外国訪問は、調整が進められている1月の訪韓が初めてとなる見通し。また、日韓首脳が相手国を訪問したのは、退任を控えた岸田前首相が9月に訪韓し、大統領室で尹大統領と会談したのが最後。

首脳会談ではロシアや北朝鮮、中国の軍事行動を念頭に、日韓、日米韓の戦略的な連携の継続・強化を確認するものとみられる。また、共同通信は、「佐渡島の金山」の労働者追悼式に韓国側が参加しなかった経緯を挙げた上で、「首相の訪問は、改善した韓国との関係を重視する姿勢を改めて示し、歴史問題をめぐる対立拡大を防ぐ意向だ」と伝えた。

一方、韓国大統領室は先月28日、「両首脳はこれまでシャトル外交を引き続き進めることで合意したが、訪韓日程についてはまだ決まっていない」とした。
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