李氏は日本に対して、長く強硬的な言動を続けてきたことで知られる。日本との友好路線を築いたユン・ソギョル(尹錫悦)前政権で、最大野党の代表だった李氏は「屈辱外交」と尹氏の対日政策を批判してきた。しかし、6月に行われた大統領選に出馬した李氏は、当初から最有力候補と目され、自身が韓国のリーダーとなることが現実味を帯びるや、「対日強硬的」な発言を封印。大統領選が迫った5月にSNSに投稿した動画では、日韓関係に言及し、「私は本当に日本と仲良くしたい」と述べ、文化交流や経済などの分野で日本と協力を進めたい考えを示した。
第21代大統領に就任し、「実用外交」を掲げた李氏は、日韓関係を重視する姿勢を維持している。6月にG7サミットが開かれた際は、現地で石破首相と日韓首脳会談を行った。会談の冒頭、石破氏は李氏に対し、大統領就任に祝意を示した上で「今年は日韓国交正常化60年という記念すべき年だ。政府や企業だけでなく、国民同士の交流も盛んになり、日韓の連携・協力が地域、世界のために大きな力となることを期待している」と述べた。李氏は両国の関係について「わが国では日本と韓国の関係を『近くて遠い国』とも呼ぶ。まるで庭を一緒に使う隣人のように、切っても切り離せない関係だ」とした上で「小さな違い、意見の違いがあるが、その違いを越えて、両国が様々な面で互いに協力し、役に立つ関係へとさらに発展していくことを期待している」と述べた。
6月22日、日本と韓国が国交を正常化する条約に署名してから60年を迎えた。これを前に、日韓でそれぞれ大使館主催の記念行事が開かれた。同月19日にはソウルの日本大使館で開かれ、李氏はG7サミット出席のため記念行事は欠席したが、動画でメッセージを寄せた。李氏は「韓日関係が安定的で未来志向的な発展を遂げていくことを願っている」とした上で、「激変する国際情勢の中で、両国はともに対応策を模索すべき重要なパートナーだ」と述べた。
先月30日には、超党派の日韓議員連盟会長を務める菅義偉元首相らが訪韓し、李氏と会談した。菅氏らは今月1日、石破氏に対し、李氏との会談について報告すると、石破氏は「シャトル外交」の推進に意欲を見せたという。
日韓シャトル外交とは、日本の首相と韓国の大統領が相互に訪問し、両国間の課題を話し合おうというもの。当初はリゾート地のようなところで気軽に行うことを目的とし、2004年7月、韓国の済州島で当時の小泉純一郎首相とノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領との間で実施された。両首脳はその後、2004年12月に鹿児島県指宿市、2005年6月にソウル市で会談を重ねたが、小泉氏の靖国神社参拝が韓国で反発が強まり、日韓関係の悪化を受けて一旦中断した。その後、2008年にイ・ミョンバク(李明博)大統領と福田康夫首相の間で復活するも、2011年12月に京都で行われた李明博氏と野田佳彦首相との間で行われた会談で、慰安婦問題をめぐる応酬となり、以後断絶した。パク・クネ(朴槿恵)大統領は訪日せず、ムン・ジェイン(文在寅)大統領は安倍晋三首相と「シャトル外交」を再開することで合意したが、本格的な実現には至らなかった。しかし、2022年5月、日韓関係改善に意欲を見せる尹前大統領の就任で潮目が変わった。2023年5月、当時の岸田文雄首相との間で12年ぶりに「シャトル外交」が復活した。
共同通信は8日、「李在明大統領が8月下旬に日本を訪問する方向で調整に入った」とし、「石破茂首相と会談し、日韓関係の安定的発展に向けて意思疎通を継続する方針を確認する」と報じた。実現すれば、李氏は大統領就任以来、初の来日となる。共同は「日本政府は、核・ミサイル開発を進める北朝鮮や、海洋進出を強める中国を念頭に置き、安全保障分野での日韓、日米韓の連携を図りたい考え。李氏が日韓間の歴史問題を取り上げるかどうか注目される」とポイントを解説した。
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