<W解説>韓国与党「共に民主党」の新代表に就任したチョン・チョンレ氏とは?
<W解説>韓国与党「共に民主党」の新代表に就任したチョン・チョンレ氏とは?
韓国の与党「共に民主党」は今月2日、新しい党代表にチョン・チョンレ(鄭清来)議員(60)を選出した。鄭氏は昨年12月に「非常戒厳」を宣言したユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の弾劾を主導した。通信社の聯合ニュースは、「弾劾政局では尹政権の与党だった保守系最大野党『国民の力』などに厳しく望んできた強硬派だけに、議会運営を巡っても妥協を許さない姿勢を取るとみられる」と伝えている。

鄭氏は中部のチュンチョンナムド(忠清南道)クムサン(錦山)郡出身。大学時代の1989年には、「ノ・テウ(盧泰愚)大統領(当時)の米国訪問反対」「米国農畜産物の輸入開放反対」などを掲げ、ソウル地域総学生連合の一員として駐韓アメリカ大使館を約50分間占拠。私製爆弾を投げ込んだとして、集会示威法・保安法違反の疑いで懲役4年、放火銃砲刀剣火薬類特別法違反で懲役2年を宣告され、投獄の経験もある。2004年に国会議員に初当選し、現在4期目。

韓国は昨年12月に「非常戒厳」を宣言した尹前大統領が罷免されたことを受け、今年6月、大統領選挙が行われ、最大野党だった「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏が当選した。李氏は同党代表を務めてきたが、大統領選立候補のために4月に辞任。それに伴い、同党は今月2日、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)コヤン(高陽)市で臨時党大会を開き、新しい党代表を選出した。鄭氏は全国を巡回しながら実施してきた代表選で得票率62%の支持を得て、パク・チャンデ前院内代表を下し、代表に就任した。

鄭氏は選出後の演説で尹前大統領による「非常戒厳」に関与した「内乱勢力」を「徹底的に断罪しなければならない」と述べた。

尹氏が宣言した「非常戒厳」は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。

「非常戒厳」の宣言による政治的、社会的混乱は大きく、当時野党だった「共に民主党」などは、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。昨年12月、採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これを受け、尹氏は職務停止となった。同案の可決を受け、憲法裁が6か月以内に尹氏を罷免するか、復職させるかを決めることになり、憲法裁では弁論が続いた。弾劾審判では、戒厳令の正当性が争点となり、国会訴追団側は、「非常戒厳」の宣言が、憲法77条が規定する「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」との要件を満たさず出されたことや、戒厳時に国会へ軍を動員し政治家らを逮捕しようとしたことなどが憲法違反だと主張した。鄭氏はこの訴追団の団長を務め、当時、「尹錫悦を弾劾するという歴史的任務を果たすためにこの場に集まった」と述べた。憲法裁は今年4月、尹氏を罷免した。これを受け鄭氏は当時、「民主主義の敵を民主主義ではねのけた国民に深く感謝申し上げる。これが民心、これが憲法精神だ」と述べた。

チョ氏は「共に民主党」の代表選に出馬後も尹氏の批判を続け、先月にはSNSを通じ、「刑務所の中で余生を過ごせ」と発言した。尹氏は内乱首謀容疑で1月に逮捕、その後、起訴され、一旦は釈放されたものの、政府から独立して捜査する特別検察官は先月10日、特殊公務執行妨害などの疑いで尹氏を再逮捕した。尹氏は再び身柄を拘束され、現在、ソウル拘置所に収容されている。ソウル中央地裁では公判が続いている。

党代表に就任した鄭氏は「非常戒厳」を巡る追及のほか、検察や司法改革にも積極的に取り組む考えを示した。野党「国民の力」との対決姿勢を崩さない考えで、今後、与野党の対立が激化する可能性がある。鄭氏は「『国民の力』が戒厳について謝罪と反省を示さなければ、握手はできない」としている。一方、「国民の力」は、鄭氏の代表就任を受けて論評を発表。「野党脅迫をやめ、『国民の力』を国政のパートナーとして尊重することを願う」とした。
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