6月の大統領選は、昨年12月に「非常戒厳」を宣言した尹政権への評価が最大の争点となった。李氏は「非常戒厳」を宣言した尹前大統領を擁護した当時与党の「国民の力」を「内乱勢力」と位置づけ、選挙期間中、「憲法秩序を崩壊しようとした内乱勢力を審判する選挙だ」と強調。「国民に銃口を向ける軍事クーデターが繰り返されない国をつくる」と訴えた。また、公約には民生の回復や、AI(人工知能)関連産業の育成、若者向けの雇用支援などを掲げた。
選挙期間中、各世論調査会社が発表した候補者の支持率で李氏は終始リードを保ち、優位に選挙戦を進めた。保守系は李氏に対抗するため、「国民の力」のキム・ムンス候補と、「改革新党」のイ・ジュンソク候補との一本化を模索したが、不発に終わった。
開票の末、李在明氏が当選し、李氏は第21代大統領に就任した。2022年以来、3年ぶりに、革新系の政権が誕生することとなった。李氏は当選時、支持者を前に「国民の偉大な決定に敬意を表す。私に与えられた大きな責任や使命、期待を裏切らないように最善を尽くす」と述べた。
李氏は就任以来、閣僚選びを迅速に行うなど、「即断即決」で政権運営を進めてきた。対外的には就任から間もなくしてカナダ西部カナナスキスで開かれた先進7か国首脳会議(G7サミット)に招待され出席。早々と外交デビューを果たした。滞在中、9か国・地域の首脳と経済など多様な分野の協力強化策について話し合った。石破茂首相との初の日韓首脳会談も行った。
前政権で冷え込んだ北朝鮮との関係改善にも乗り出し、南北軍事境界線付近に設置のスピーカーを使って前政権が行っていた北朝鮮向け宣伝放送を中断。今月にはスピーカーそのものを撤去した。現在のところ、この措置に対する北朝鮮の反応は薄いが、李政権としてはこうした融和的措置を重ねることで北朝鮮との対話再開につなげようとしている。
就任から約2か月が経った今月15日、ソウル市の光化門広場で李氏の「国民任命式」が開かれた。式典の正式名称は「光復80年、国民主権で未来を築く」。韓国は同日、日本の植民地支配からの解放記念日「光復節」を迎えたが、任命式は光復80年にちなみ、80人の国民代表が、それぞれの願いを込めた任命状を大統領に授与する形で行われた。国民代表には、各分野で功績を収めた人や社会奉仕に尽力してきた市民らが選ばれた。
任命式には一般市民も含め約1万人が出席。李氏は聴衆を前に、「国民の皆に捧げる手紙」を朗読し、「国民の忠実な働き手として、ただ国民だけを信じ、『国民が主人の国』『国民が幸せな国』に向かって進む」と表明した。
就任式に代わる異例の行事として開催された「任命式」で、李氏は、国民に開かれた政権であることをアピールする機会を得た。しかし、韓国紙の朝鮮日報は14日付の社説で「光復節当日の大統領任命式は計画段階から様々な議論が巻き起こった。国を取り戻して90年を迎える喜びを分かち合う、その本来の意味が色あせるとの懸念が広がったからだ」と指摘。「李在明大統領があえて光復80周年のその日に任命式を行う理由は、自らの就任を韓国現代史における歴史的出来事の一つにしたいという意向があるからだ」と解説した。
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