李氏が出演したのは、放送局JTBCの「冷蔵庫をよろしく」。2人のシェフが、ゲストの冷蔵庫にある食材だけを使い、15分の制限時間内に調理するバラエティー番組だ。調理中、ゲストの冷蔵庫にまつわるプライベートなトークが披露される。
李氏はこの番組に、キム・ヘギョン(金恵京)夫人と出演した。李氏がバラエティー番組に出演するのは、ソウル近郊のソンナム(城南)市長時代の2017年にSBSの「同床異夢2 君は僕の運命」に出演して以来、8年ぶりのことだった。今回は「秋夕特集」として収録され、李氏は番組冒頭、「秋夕といえば真っ先に思い浮かぶのは『豊かさ』だ」とし、「国民の皆さんが楽しい秋夕を過ごされることを願う」と話した。韓国の食文化は大切な財産だと語った李氏は、「世界に広めたいK-食材」として、「シレギ」を挙げ、シレギを使った料理をシェフに依頼した。シレギは大根の葉を寒風にさらして乾かしたもの。シレギを使った料理は様々あるが、味付けしたシレギを入れて炊くシレギご飯が代表的だ。
番組の中で李氏は、金夫人が作ってくれる料理の中で一番好きなものとして「シレギのサバ煮つけ」を挙げた。その上で、「シレギは私にとって思い出の味であり、おいしいだけでなくビタミンも豊富な健康食材だ。原産地『韓国』と表示すれば、いくらでも輸出できるのではないか」とPRした。
一方、金夫人はK-フードとしてのキンパ(韓国式のり巻き)の可能性に言及。先月、李氏の訪米に同行した際、ニューヨークで子どもたちとキンパを作ったエピソードを語り、「海外では、これまで(東洋料理といえば)寿司だったが、今では皆、自信を持ってキンパだと言うようになった」と話した。金氏の話に、李氏はネットフリックスで配信中の人気アニメーション映画「K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ」の中に、登場人物がキンパを食べるシーンが出てくることに触れ、「あの場面は在外同胞が最も胸を熱くするシーンだ」と誇らしげに語った。
番組は当初、今月5日に放送予定で、JTBCも「史上最大級のゲストがやってくる」と大々的に告知した。しかし、韓国では先月26日、国家情報管理院5階の電算室で火災が発生し、リチウムイオンバッテリー384個とサーバーが燃え、政府の647の電算システムがまひした。郵便や金融、医療など日常生活に直結するサービスが広範囲に停止し、一部は復旧したが、混乱は続いている。3日には、このシステム障害に対応に当たっていた行政安全部の職員が、政府セジョン(世宗)庁舎の前で倒れているのが見つかり、死亡した。自殺とみられている。
懸命な復旧作業が続く中、李氏は先月28日に「冷蔵庫をよろしく」の収録に臨んでいたとみられ、野党などはこれを痛烈に批判。「国民の力」のチャン・ドンヒョク代表は、李氏が出演した「冷蔵庫をよろしく」の番組名にちなみ、「今、国民が気になるのは、李大統領夫妻の冷蔵庫の中ではなく、大統領の頭の中だ」と指摘。「深刻な国家的災害が発生した状況でバラエティーの収録など、何を考えているのか」と非難した。
批判が高まり、JTBCは当初予定した5日の放送を、翌6日に延期した。大統領室は「国家公務員が亡くなったことにより、全省庁が追悼する時間を過ごしている点を勘案し、JTBC側に放送延期を要請することになった」と説明した。
番組は、6日には予定通り放送された。
李氏は秋夕に合わせ、7日、自身のSNSに国民に向けたメッセージとともに、大統領としての決意を記した。李氏は「時には自分の全てを犠牲にし、指を指され、誤解を受けることがあっても、国民の暮らしにわずかでも助けになるのなら、何事もいとわない覚悟で臨んでいる」とした。システム障害での混乱真っただ中でのバラエティー番組収録は、その覚悟に沿う行動といえるのか。
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