<W解説>良好な関係の継続の可能性を抱かせた日韓首脳会談
<W解説>良好な関係の継続の可能性を抱かせた日韓首脳会談
高市早苗首相と韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領は先月30日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開催地、韓国南東部のキョンジュ(慶州)で会談した。先月に首相に就任した高市氏が李氏と会談するのは初めて。両首脳は、未来志向の日韓関係を安定的に発展させる方針を確認、首脳同士の相互訪問「シャトル外交」の継続でも一致した。韓国で、高市氏は歴史問題や領土問題について「保守強硬派」と認知されており、会談前、韓国メディアは懸念をにじませ伝えていたが、会談後は友好的な雰囲気を伝える報道が目立った。通信社の聯合ニュースは今回の会談について「会談でも(高市氏は)両国関係で前向きな姿勢を示し、友好的な流れが続く可能性を見せた」と伝えた。

会談は、20分の予定をオーバーして、約40分行われた。李氏は冒頭、「激変する国際情勢と通商環境の中で、隣国であり、共通点の多い韓日両国は、これまで以上に未来志向の協力を強化すべきだ」と述べた。その上で、「両国は本当に多くの共通点を持っており、協力を深めれば国内外の問題を共に解決できる」とした。さらに李氏は「高市総理は就任会見で『韓国は日本にとって極めて重要な隣国であり、関係を安定的に発展させたい』と述べたと聞いた。まったく同感であり、私の言葉と一字一句同じだ」と述べた。

これに対し、高市氏は今年が日韓国交正常化60周年の節目であることを踏まえ、「日韓関係を未来志向で安定的に発展させていくことが両国にとって有益だ」とし、「シャトル外交をうまく活用しながら、大統領と私の間で良い意思疎通を続けていきたい」と述べた。

また、李氏は高市氏が日本初の女性首相であることにも触れ、「格別の意味があり、心からお祝いする」と述べた。

会談で、両首脳は北朝鮮の核・ミサイルの脅威などに対応するための日米韓3か国の連携の重要性も共有した。

終了後、高市氏は記者団の取材に「とても温かく歓迎していただき、とても楽しい意見交換をした。次は日本でお迎えすると思う」と述べた。

会談では高市氏が李氏と握手をした後、席に移動する際、韓国と日本の国旗に頭を下げたことも話題となっている。この場面は切り抜き動画となって動画サイトに投稿され、ネットユーザーからは「礼儀正しい方だ」「日本人特有の見せかけの演技」などとさまざまなコメントが寄せられている。韓国紙のソウル新聞は「韓国に対する尊敬の念を表したものとみられる」と伝えた。

また、会談の際、李氏は高市氏に韓国コスメとのりを贈った。先月の高市氏の首相就任会見で、韓国紙の記者が「韓国では、高市首相就任で韓日関係が悪化するとの懸念もある」と指摘したのに対し、高市氏が「いろいろ懸念があるようだが、私は韓国のりが好きで、韓国コスメも使っているし、韓国ドラマも見ている」と答え、「韓国好き」をアピールしたことから、李氏が考慮して贈呈を決めたという。一方、高市氏からは、囲碁好きだという李氏に対して、李氏の故郷である南東部のアンドン(安東)市と交流がある神奈川県鎌倉市で作られた碁盤と碁石が贈られた。

会談前、高市氏の歴史認識などをめぐる過去の言動から、李政権側には一定の警戒感があったが、李氏との初会談は穏やかな雰囲気で進み、現在の良好な関係が継続する可能性を見せた。李氏は1日、高市氏と初めて会談した際の感想を記者に問われ、「非常に良い印象を受けた。心配は全て消えた」と述べ、「日韓関係は今よりさらに発展できる」と強調した。

聯合ニュースは、李氏が「高市政権とも友好的な関係を築く基盤をつくった」と伝えた上で、「李大統領としては、高市首相とシャトル外交を継続するとともに、交流・協力を強化し、歴史問題をも解決する好循環の糸口を探ることが今後の課題になりそうだ」と指摘した。

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