バリで町を歩いていると、足元に葉っぱのお皿に花が乗ったものが置かれていることに気付くでしょう。
バリヒンズー教でお祈りの際にお供えとして捧げる「チャナン」といいます。
チャナンは、バナナの葉で作ったお皿の上に、色とりどりの花と炊き立てのご飯が載せられたもので、お祈りの際には線香と水も合わせて供えられます。
ご飯の代わりに店舗で販売しているお菓子や飴などを載せていることも。
日本で仏壇にお供えしているものと似ていて親近感を感じます。
毎日朝夕2回、ご飯が炊きあがるタイミングで、腰にサロンを巻いてお祈りをします。
それも、」家の神棚・社のほか、家やお店、敷地や村の入口など何か所も。
チャナンを供えて線香を焚き、お寺で配布される聖なる水を周囲に巻き、目を閉じて経(マントラ)を唱えます。
悪魔が内に入って来ないようにお供えを置き、「ここでお引き取りください」というような意味合いだそうです。
そんな訳で、バリヒンズーの家では毎日数多くのチャナンを用意しなければなりません。
市場などで購入することもできますが、イブイブ(=おばあちゃんやお母さんたち。
イブ(=ご婦人)の複数形)は毎日チャナン作りで大忙し。チャナンの形や飾りつけは地域によっても異なっており、お嫁に行く際にはチャナン作りも学ぶそうです。
その他、寺院での祈祷行事でもチャナンは必需品。ひとり一つ、自分の前に置いて線香を焚き、お祈りします。
祈祷行事も数えきれないほど多く、2日に1度は寺院で様々な行事が行われ、それぞれお供えを用意したり、あちこち寺院に参詣したり、行列で練り歩いたり、老若男女問わず年中大忙しです。
行事日程は西洋歴とは異なる2つの暦にのっとっており、把握するのは困難を極めます。
そのため「バリカレンダー」という、バリヒンズー教の行事が細かく書き込まれたカレンダーが各家の壁に常備されているほか、早朝の市場ではイブイブたちが情報交換を怠りません。
バリ人でさえ、仕事の出がけにお婆ちゃんに「今日はあの行事だよ!」と呼び止められて知るほど。
ちなみにその場合は仕事を休んで行事参加です。
仕事よりも食事よりも祈祷行事優先。
それがバリ人の生活です。
ちなみに、こうした祈祷行事を説明する際に日本語の達者なバリ人は「おまつり」と説明してくれますが、そんなわけで、現代日本の「お祭り」とは色々大違い。
「おまつり」に参加するというと、日本人としては「休暇かな?」と思いがちですが、彼らとしては仕事よりも重要な義務。
「おまつり」の後に別途、休暇をとるのがバリ流です。
インドネシアの国全体としてはイスラム教が主たる宗教ですが、バリ島はインドネシアではほぼ唯一といっていい、バリヒンズー教の島で、バリ島ローカルの生活はバリヒンズー教を中心に回っています。
バリ島に住む際の届け出書類の項目に「宗教」があることからも、それが個人を証明する上で切り離せない大切な要素なのです。
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