元徴用工訴訟をめぐっては、長年、日韓最大の懸案となってきたが、韓国政府が今年3月、大法院から賠償を命じられた日本企業に代わって、韓国政府傘下の財団が元徴用工やその遺族らに賠償金を支払う「第三者弁済」の解決策を発表。既に勝訴が確定している15人中、これまでに11人の原告遺族への支給を終えた。解決策発表の際、韓国政府は係争中の訴訟でも原告の勝訴が確定した場合には同様に支払う方針を示しており、韓国外交部(外務省に相当)は、今回の原告にも財団が支払うとしている。しかし、聯合ニュースは「財団は、1965年の韓日請求権協定に基づき韓国が受け取った資金の支援を受けた鉄鋼大手、ポスコが拠出した40億ウォン(約4億4000万円)などで基金を作ったが、現在は新たに勝訴が確定した被害者に賠償金の支払うには足りないとされる」と指摘している。
元徴用工らの訴訟で大法院が判決を出すのは、2018年以来5年ぶり。1、2審では原告が勝訴し、日本企業側が上告していた。日本政府は、元徴用工の補償問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場だが、大法院は21日、「原告側の個人の請求権は、協定の範囲に含まれないとする1審の判決に誤りはない」と指摘。三菱重工業と日本製鉄に対し、原告1人当たり1億ウォン~1億5000万ウォン(約1100万円から1600万円)の賠償金と遅延損害金を支払うよう命じた2審を支持した。これにより、原告への賠償を命じる判決が確定した。
判決について、林芳正官房長官は21日の記者会見で「日韓請求権協定に明らかに違反するものであり、極めて遺憾だ。断じて受け入れられない」とし、韓国側に抗議したことを明らかにした。その上で、「韓国政府は、原告勝訴が確定する場合の判決金、及び遅延利息について、韓国の財団が支給する予定である旨を既に表明しており、それに沿って対応していくものと考えている」と述べた。
元徴用工訴訟問題に関して、韓国政府は今年3月、解決策を発表した。その内容は、元徴用工を支援する韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、元徴用工らへの賠償を命じられた日本企業に代わって遅延利子を含む賠償金相当額を原告らに支給するというもの。韓国政府がこの解決策を発表した際、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は「これまで政府が、被害者の立場を尊重しながら韓日両国の共同利益と未来発展に符合する方法を模索した結果だ」と強調した。
財団はこれまでに、元徴用工訴訟で勝訴した原告ら15人のうち、生存している原告の1人と10人の遺族への支給を完了したものの、残りの原告と遺族の計4人は日本企業による謝罪や賠償を求めて受け取りを拒否している。
元徴用工訴訟はまだ係争中の訴訟が少なくとも60件ある。同様の大法院判決は今後も続く可能性があり、韓国政府は今回の訴訟の原告も含め、今後も同様の訴訟で新たに勝訴が確定した原告には同じように支払いに応じる方針だ。しかし、韓国メディアは財源が足りなくなる可能性を指摘している。韓国政府は解決策を発表した際、民間企業から寄付を募り基金を設立して支払うとしたが、これまでのところ拠出したのは鉄鋼大手のポスコのみ。韓国紙のハンギョレは21日の社説で「韓国政府が『第三者弁済』のために作った財団の基金は40億ウォンに過ぎない」と指摘。今後、新たに勝訴する可能性のある原告の人数を考えると「総賠償額は少なくとも150億ウォンを超えると推算される」と伝えた。
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