<W解説>北朝鮮の金総書記が訪中、随行員が取った不可解な行動とは?
<W解説>北朝鮮の金総書記が訪中、随行員が取った不可解な行動とは?
このほど中国で開かれた抗日戦争勝利80年の記念式典に出席した北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記は、同じく式典に出席したロシアのプーチン大統領と北京市内で会談したが、会談後に北朝鮮側の随行員が取った行動に注目が集まっている。会談の際、金氏が座ったイスなどを随行員が入念に拭く様子を捉えた映像を、ロシア人の記者が通信アプリに投稿した。随行員のこの不可解な行動は何を目的としているのか。

式典には、北朝鮮の金総書記やロシアのプーチン大統領のほか、新興・途上国を中心に計26か国の首脳級が出席した。また、これらの国以外の政府関係者や元首脳、国際機関の幹部らも参列。日本からは鳩山由紀夫元首相、韓国からは、ウ・ウォンシク国会議長らが出席した。北京の天安門広場での式典では、「戦勝80年」に合わせて80発の礼砲が放たれた。続いて習近平国家主席が演説し、「中華民族は威圧を恐れない」とした上で、兵士に対し、「平和か戦争か、対話か対決かの選択に直面している。国家の主権や統一を断固として維持しよう」と呼び掛けた。また、第2次世界大戦における中国の役割を称賛。「中国人民は、国家として多大な犠牲を払いながらも、人類文明の救済と世界平和の維持に大きく貢献した」と強調した。続いて行われた軍事パレードには1万人以上の兵士が参加したほか、100機以上の航空機、軍用車両など数百台の地上装備が登場した。

式典では、天安門楼上に北朝鮮の金総書記とロシアのプーチン大統領が習氏の両隣に並び、中ロ朝の結束を誇示。欧米主導の国際秩序に対抗する姿勢を印象づけた。

式典後、金氏はプーチン氏と会談した。プーチン氏は「両国関係は最近、特別で信頼に満ちた友好的な性格、そして同盟的な性格を帯びてきた」と述べた。これに対し、金氏は「大統領とロシア国民のために私ができることがあるならば、それは義務だと考えている」と応じた。

プーチン氏が述べたように、最近のロ朝の蜜月ぶりは際立っている。昨年6月、ロ朝は、どちらか一方が戦争状態になった際、軍事的な援助を提供することなどを明記した「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。これに基づき、北朝鮮はロシアによるウクライナ侵攻を支援するため、ロシアに北朝鮮軍兵を派兵した。今年5月、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の履行状況を監視する「多国間制裁監視チーム(MSMT)」は、1万1000人を超える北朝鮮兵士が昨年、ロシアに派遣されたとの見方を示した。

北京でのロ朝首脳会談で、プーチン氏は北朝鮮軍の派兵に改めて感謝の意を示し、ロシアは勇敢に戦った北朝鮮軍を絶対に忘れないと伝えた。金氏は、両国が多様な分野で協力を強化するために努力しなければならないとした。

会談終了後、プーチン氏の番記者として知られるアレクサンドル・ユナシェフ氏は、北朝鮮の随行員たちの謎の行動を捉えた映像を、通信アプリ「テレグラム」に投稿した。映像からは、随行員たちが会談終了後、金氏が触れたとみられるテーブルやイスの座面、背もたれ、ひじ掛けを念入りに拭く様子が確認できる。女性随行員は金氏が使用したとみられるコップを持ち去った。

米CNNは「金正恩のDNAを拭き取る?」とのテロップを表示し、これを報じた。ロイター通信によると、米スティムソン・センターの北朝鮮専門家、マイケルマッデン氏は同通信の取材に、こうした対応は金氏の父、キム・ジョンイル(金正日)氏の時代から続いていると指摘。「たとえ友好国であっても、外国の情報機関がサンプルを入手して検査するのを防ぐためだ」と述べた。金氏の指紋が流出すれば、機密文書のアクセスにつながる恐れがあり、体液は金氏のDNAや健康状態の分析に使われる可能性がある。随行員たちは、ひいては体制にも影響を及ぼしかねない、金氏の「生体情報」の流出を防ぐため、同氏のあらゆる「痕跡」を消そうとしていたとみられている。

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