石破氏は7日、緊急の記者会見を行い、辞任する意向を正式に表明した。石破氏は「かねてより、『地位に恋々とするものではない。やるべきことを成した後に、しかるべきタイミングで決断する』と申し上げてきた。アメリカの関税措置に関する交渉に一つの区切りがついた今こそが、しかるべきタイミングであると考え、後進に道を譲る決断をした」と述べた。7月の参院選で与党が大敗し、自民党内では「石破おろし」の動きが次第に大きくなる中、石破氏はそれにあらがい、続投の意向を貫こうとしたが、これ以上の政権運営は不可能と判断した。石破氏は会見で「まだやり遂げなければならないことがあった。苦渋の決断だった」と悔しさをにじませた。石破政権は昨年10月に発足したが、約1年で幕を閉じることとなった。
韓国メディアは、日本メディアの報道を引用する形で、石破氏が辞任の意向を固めたことを相次いで速報した。通信社の聯合ニュースは「党内の退陣圧力の中でも政権を維持するという意欲を示してきた」と、石破氏が辞任を表明するまでの経緯を紹介しながら伝えた。
石破氏は昨年10月、東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議などに出席するために訪れたラオスで、韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領(当時)と対面では初となる首脳会談を行った。尹氏は「前任の岸田(文雄)総理に続き、シャトル外交(首脳同士の相互訪問
)を含む活発な意思疎通を通じて、韓日関係の発展をともに図っていきたい」と述べた。これに対し、石破氏は「日本と韓国の緊密な協力は、地域の平和と安定のためにも非常に重要だ」とし、「尹大統領と岸田前総理が大きく改善させた両国関係を継承し、さらに発展させていきたい」と応じた。
今年は日韓国交正常化60周年で、6月に在日本韓国大使館の主催で開かれた記念イベントには石破氏も出席。「日韓は互いに最も近い隣人として、幅広い交流を積み重ねてきた。両国関係が安定的に発展していくよう、緊密な意思疎通を続けなければならない」とあいさつ。関係強化に意欲を示した上で「未来に向かって共に新たな一歩を踏み出そう」と呼び掛けた。韓国では同月、イ・ジェミョン(李在明)大統領が就任した。先月下旬には、李氏が就任後初めて来日し、石破氏と首脳会談を行った。両首脳は未来志向の日韓関係発展に向けた協力を推進していくことで一致した。約2時間の会談のうち、出席者を限定した少人数による会合は予定されていた20分を大幅に越え、約1時間に及んだ。会談後は、その成果をまとめた「共同文書」を17年ぶりに取りまとめた。
韓国で石破氏は歴史問題などで比較的穏健とみられている。石破氏の辞任表明に、東亜日報は「韓日関係の発展を推進した石破首相の辞任で、両国の関係が再び『視界不良』の状況になる可能性があるとの指摘も出ている」と伝えた。韓国経済新聞は「韓国に友好的な石破首相が退けば、韓日関係に少なからず波紋が及ぶと予想される」と懸念を示した。その上で、後任には小泉進次郎農相や高市早苗前経済安全保障担当相が「有力だ」とした上で、高市氏について「故安倍晋三元首相の保守強硬路線に追従し、日韓関係に悪影響を及ぼしかねない」と指摘。小泉氏は「高市氏に比べれば穏健派とされる」とした一方、「首相になれば、右翼、反韓層の顔色をうかがうしかないだろうとの分析も出ている」と伝えた。
一方、韓国大統領室は石破氏の辞任表明に「日本国内の政治に関して言及することは適切ではない」と前置きした上で、「両国は未来志向的で安定的な関係発展の方向性について幅広く共感している」とし、石破氏の退陣後も「前向きな関係を続けることを期待する」とのコメントを発表した。
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