<W解説>デンマークで「辛すぎる」として回収の韓国メーカーの即席めん、報道で関心高まり思わぬ宣伝効果?
<W解説>デンマークで「辛すぎる」として回収の韓国メーカーの即席めん、報道で関心高まり思わぬ宣伝効果?
韓国の食品大手、三養食品の即席麺「ブルダック炒め麺」シリーズの3種類の製品が、デンマークでリコール(回収)の対象となった中、このニュースを世界のメディアなどが報じたことで「ブルダック炒め麺」に対する関心が高まっている。韓国紙のハンギョレは「『ノイズマーケティング』の効果を正確に示しているわけだ」と伝えている。

 デンマークの食品当局は今月11日、「ブルダック炒め麺」シリーズの「ヘクブルダック炒め麺激辛2倍」、「同3倍」「ブルダック炒め湯麺」の3種類について「製品に含まれる唐辛子の辛味成分『カプサイシン』の含有量が多く、人体に有害な恐れがある」として回収を指示。消費者に対しては製品を廃棄するよう呼び掛けた。一般のブルダック炒め麺の辛さを表すスコビル値は4400程度だが、「激辛2倍」は8800、「激辛3倍」は1万2000という。両製品は韓国では販売されておらず、海外のみ輸出されている。

 デンマークの食品当局の対応について、三養食品の関係者は「品質の問題ではなく、辛すぎて問題が発生する可能性があるため自主的にリコールを行ったと把握している」とした上で、「当該製品を世界各国に輸出しているが、このような理由でリコールが行われたのは初めて」と説明した。

 今や、世界で人気が高まっている三養食品のブルダック炒め麺は、同社が2012年に発売した激辛インスタントラーメンだ。これまでチーズやカレー、キムチ、焼きそばなどシリーズ化され、40億個以上が販売された。ブルダック炒め麺によって、外国人が韓国の辛いインスタントラーメンに挑戦する「ファイヤー・ヌードル・チャレンジ」が世界的に広まった。動画投稿サイト「ユーチューブ」では、関連の動画だけで100万本以上アップロードされている。また、ブルダック炒め麺は、チャパグリ(チャパゲティとノグリという2種類のインスタント麺を合わせたレシピ)のように、消費者が既存の製品をアレンジして、世の中にまだ存在しない製品を作る「モディシューマー(modify+consumer)」ブームを巻き起こした。

 ブルダック炒め麺を販売する三養食品は、韓国で初めてインスタントラーメンを発売した食品メーカーとして知られる。1963年に発売された「三養ラーメン」は、朝鮮戦争後の食糧難が続いていた韓国で、手軽に食べられる食品として創業者の故チョン・ジュンユン(全仲潤)氏が考案した。

 また、この製品が生まれた背景には、国民の窮乏を救いたいというチョン氏の思いに日本の明星食品の奥井清澄社長(当時)が共感し、明星食品が技術を無償で提供したというエピソードがある。

 三養食品は、デンマークの食品当局の措置を受け、外部機関に依頼して製品のカプサイシンの量を測定。19日、デンマーク政府に反論意見書を提出した。同社は意見書で「デンマーク獣医食品庁がカプサイシンの含有量を計算した際、全体の重量である140グラムを基準にして1袋当たり113ミリグラムと計算したが、ブルダック炒め麺の麺にはカプサイシンは入っておらず、スープにのみ含まれるため、スープの重量(31.8グラム)を基準に計算しなければならない。このように計算すれば、ラーメン1袋当たりの総カプサイシンの含有量は、デンマーク政府が発表した値の4分の1水準に過ぎない」と説明した。

 デンマークのリコール措置は英国の公共放送BBCやフランスの通信社AFP通信など各国のメディアが報道。BBCなどは記者が実際にブルダック炒め麺を試食してレポートしたりもした。

 このように各国メディアで報道されたことにより、ブルダック炒め麺の関心は一段と高まっている。ハンギョレが伝えたところによると、グーグルでの「ブルダック」のキーワード検索数は今月、過去最高を記録したという。米ワシントンポストは「関連キーワードがタグ付けされた投稿は3億6000万件に上る」と報じた。

 こうした現象を、三養食品側は冷静に受け止めているというが、韓国メディアは「怪我の功名」(中央日報)、「災い転じて福」(ハンギョレ)などと伝えている。

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