尹氏は支持率低迷に悩まされている。先月4日に世論調査会社の韓国ギャラップが発表した調査の結果では初めて支持率が10%台になった。その後、やや上昇したが、低空飛行の状態が続いている。
不支持の主要因の一つに、尹氏の妻、キム・ゴンヒ(金建希)氏をめぐる問題がある。金氏をめぐっては、輸入車ディーラー「ドイツ・モーターズ」の元会長が2009~12年、株価を不正に引き上げるなどした事件に関わった疑いで2020年4月、「共に民主党」の前身の「開かれた民主党」から告発された。ソウル中央地検は今年7月、金氏に事情聴取を行った。現職大統領の夫人が検察から聴取を受けるのは金氏が初めてのことだった。だが、検察は10月、「金氏が犯行に加担したと認定するのは困難」として金氏を不起訴処分にした。また、検察は金氏が知人から高級ブランド「ディオール」のバッグを不正に受け取った疑惑についても同月、不起訴とした。金氏をめぐる問題の対応では、尹氏と与党「国民の力」のハン・ドンフン(韓東勲)代表との確執も表面化した。
「共に民主党」は金氏をめぐる疑惑を政府から独立した特別検察官に捜査させるための特別法案の成立を目指している。国会では、野党の賛成多数で「キム・ゴンヒ特検法」が可決したが、尹大統領は先月26日、同法案について3度目の再議要求権(拒否権)を行使した。尹氏は同法案以外にも、可決した法案への拒否権行使をこれまで頻発させており、このことも国民の怒りを買っている。
尹氏を弾劾に追い込もうと、先月30日の集会では「拒否権」になぞらえて、「尹錫悦を拒否する」集会が開かれ、主催者の推算で10万人が参加した。デモ行進も行われ、韓国紙のハンギョレは「友人と参加した若者たちや、ベビーカーを押しながら参加した夫婦、ろうそくのヘアバンドと手作りのプラカードを持ってきた家族に至るまで、市民たちは様々な姿で寒さに耐えながら民主主義の回復を願っていた」と伝えた。同紙によると、参加者の一人は取材に「政府は民主主義の基本システムを破壊している。これ以上放置すれば、回復できないほど壊れると思った」とし、「(大統領)本人の家族と関連した法に対して拒否権を行使し続けるのはあり得ないこと」と憤った。
行進に加わった「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表をはじめとする同党議員たちは、これに先立ち独自の集会を開催。朝鮮日報によると、集会では、金氏をめぐる問題などについて「6カ月以内に決着をつけよう」との声が上がったという。「6カ月」との期限を設定したのは、同党の李代表の裁判が関係している。李氏をめぐっては、現在5件の裁判が行われており、先月15日には公職選挙法違反の罪で懲役1年執行猶予2年の有罪判決を受けた。また、偽証教唆の罪に問われ開かれた先月25日の判決公判では、無罪が言い渡された。
公職選挙法違反事件の1審で有罪判決を受けた李氏は控訴したため、今後も裁判が続くことになった。公職選挙法違反事件の裁判は一審は6カ月以内、二審、三審は3カ月以内に終わらせなければならないと法律で定められている。朝鮮日報は「李在明代表の二審と三審が来年上半期までには終了し、大法院(最高裁)でも判決が下される可能性は決して小さくない」と指摘。李氏は2027年の大統領選でも野党有力候補と目されており、同紙は「もし今回の一審判決が(今後の上級審で)確定すれば、李代表は大統領選挙に出馬できず、『共に民主党』は(前回の)大統領選挙時に補填を受けた434億ウォン(約46億6000万円)の選挙費用も返還しなければならなくなる。これを阻止するため、大法院で判決が確定する前に尹大統領弾劾などで政局をひっくり返したい考えを『共に民主党』はもはや隠そうともしないのだ」と、同党が「6カ月以内に決着」と声を上げている理由を解説した。「政治報復」とも指摘される同党の動きに、同紙は2日付の社説で「党の一部は尹大統領弾劾と任期短縮を目指す憲法改正も推進しており、また『尹錫悦政権弾劾』を掲げる集会も毎週続けている。報復に向けたあからさまな扇動だ」と批判した。
一方、尹氏は3日夜、「非常戒厳」を宣布した。「共に民主党」が議席の過半数を握る国会を利用して国政をまひさせており、「憲政秩序を守るため」とした。集会、デモなどを含めた一切の政治活動を禁じる布告令を発表したが、戒厳令はわずか6時間後に解除された。だが、尹氏の突然の発表に、韓国内は混乱が続いている。
Copyright(C) wowneta.jp