<W解説>韓国・李大統領、閣僚選びでつまずく=支持率は就任以来、初の下落
<W解説>韓国・李大統領、閣僚選びでつまずく=支持率は就任以来、初の下落
韓国のイ・ジェミョン(李在明)政権で、女性家族部(部は省に相当)長官候補に指名されていた、与党「共に民主党」のカン・ソヌ議員が23日、就任を辞退した。カン氏をめぐっては補佐官へのパワハラ疑惑が指摘され、最大野党「国民の力」などは高位公職者の資質に欠けるとして、辞退を求めていた。李政権の閣僚人事をめぐっては、李大統領が20日、論文の盗用疑惑などが持ち上がっていた教育部長官候補のイ・ジンスク氏の指名を撤回している。李大統領は先月4日に就任して以来、閣僚の人選を進めてきたが、ここにきて組閣にブレーキがかかっている。就任以来、上昇を続けてきた支持率も、最新の世論調査で初めて下落した。閣僚人事をめぐる混乱も影響したとみられている。李大統領はカン氏に代わる候補者選びを急ぎ、早期に組閣を成し遂げることで政権への批判を最小限に抑えたい考えだ。

韓国では、閣僚など、高位公職者が就任するに当たり、国会で人事聴聞会が開かれ、高位公職者候補の資質と能力が検証される。人事聴聞会で候補者が適任と判断されれば人事聴聞報告書が採択され、大統領が任命を下し、候補者は正式に就任する。大統領は報告書が採択されなくても各長官を就任させることは可能だが、国会で不適格と判断された人物が要職に就くことになる。

先月4日に大統領に就任した李在明氏は閣僚候補選びを進め、女性家族部長官候補には与党「共に民主党」のカン・ソヌ議員を指名。しかし、カン氏をめぐり、自身の補佐官らに対して不当な要求を繰り返したとされるパワハラ疑惑が浮上した。補佐官らに自宅のゴミの分別やトイレの便器の修理をさせていたとされ、カン氏が国会議員を務めていたこの5年間に、補佐官が46回も免職になっていたと指摘された。

李大統領が指名した閣僚候補の国会人事聴聞会は今月14日から始まり、18日まで開かれてきた。14日には、カン氏の聴聞会が開かれた。最大野党「国民の力」は疑惑を追及し、聴聞会は日付が変わる深夜まで続いた。カン氏は取り沙汰されている疑惑について、細かい事実関係については「誤解だ」とした一方、「全て私の不徳によるものだった」と謝罪した。だが、「国民の力」は資質に欠けるとして就任辞退を迫った。女性団体もこれに同調。韓国女性団体協議会は16日、声明を発表し、「韓国女性団体協議会の全国500万人の会員は、社会で当然守られるべき最低限の尊重と人権まで無視したカン・ソヌ候補者の態度に深い遺憾を表し、候補者自ら辞退することを強く求める」とした。

李大統領が指名した閣僚候補をめぐっては、教育部長官候補に指名されたチュンナム(忠南)大学前総長のイ・ジンスク氏に論文盗用疑惑が浮上。16日にはイ氏の聴聞会が開かれ、イ氏は謝罪したが、李大統領は20日、イ氏の指名を撤回した。大統領室高官は同日、「大統領がさまざま意見を聞き、悩んだ末の決定だ」と説明した。

李大統領は23日、これまでに指名した18人(農林畜産食品部長官は留任)のうち8人の閣僚候補に任命状を手渡した。カン氏も近く任命されるものとみられていたが、カン氏は同日、就任を辞退する意向を表明した。カン氏はSNSに「全てを注ぎ込んで頑張ってみたかったが、ここまでだったようだ。私を信じてチャンスをくれた李大統領にも申し訳ない気持ちでいっぱいだ」などと投稿した。これを受け、大統領室は「国民の目線に合う候補を速やかに見つける」としている。

先月4日に就任した李大統領は、これまで支持率上昇が続いていたが、世論調査会社のリアルメーターが21日に発表した調査結果によると、支持率は前週に比べ2.4ポイント下がって62.2%だった。同社調査では、李大統領の就任後初めて下落に転じた。政党支持率も与党「共に民主党」は前週比減となっている。2022年のユン・ソギョル(尹錫悦)前政権初期、閣僚候補が相次いで辞退するなど人事問題が浮き彫りとなり、大統領や与党の支持率は低下した。今回、初めて李大統領の支持率が下落に転じた要因には、閣僚人事をめぐる混乱も影響しているとみられている。李政権としては、人選の見直しを図って早期の組閣に持ち込み、この問題での政権批判を抑えたい考えだ。
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