李氏はサムスン電子副会長だった2015年に、自身の経営権強化を図ったグループ内の企業合併の過程で、株価操作などを指示したとして20年に在宅起訴された。
在鎔氏はサムスン創業者の孫で、1991年にサムスン電子に入社。2012年に同社副会長となったが、会長だった父親のイ・ゴンヒ(李健熙)氏が2020年10月に死去して以降も実質的な経営トップでありながら、肩書は副会長であり続けた。しかし、2022年11月、ようやく会長に就任した。同社取締役会は当時、在鎔氏の会長就任について「グローバル環境が悪化している中、責任経営の強化と経営安定性の向上、迅速かつ果敢な意思決定が必要だと判断した」と説明している。
しかし、在鎔氏が会長就任にあたって、当時、抱負を語ったのは裁判所の前だった。今月17日に無罪が確定した裁判の、当時は一審の公判中で、裁判所から出てきた在鎔氏は、会長となったことについて報道陣に「肩の荷がかなり重くなった。国民に少しでも信頼され、愛される企業をつくりたい」と語った。これに韓国紙の朝鮮日報は当時、「会長として第一歩を踏み出した場所が裁判所だった点は、李会長をめぐる司法リスクが依然として解消されていないことを示している」と指摘した。
一審、二審の判決は、検察が主張した19件の疑惑を全て棄却。今月17日、最高裁は一、二審判決に誤りはないとする判断を下した。これにより李氏の無罪が確定した。李氏の弁護団は同日、「賢明な判断を下した裁判所に感謝する」と表明した。
李氏の無罪判決確定に、韓国紙の中央日報は18日付の社説で「今回の事件は罪より人を標的とする韓国式特殊捜査の問題点を浮き彫りにした」と指摘。「検察の捜査・起訴の責任者だった当時のソウル中央地検のイ・ボクヒョン部長検事は、サムスングループ系列会社を含む53か所を家宅捜索し、約300人を調査した」とした上で、「2020年に外部の専門家が参加した検察捜査審議委員会が不起訴を勧告したが、検察は19件もの容疑をつけて起訴を強行した。一、二審で無罪が言い渡されると、検察は反省して上告を断念すべきだとの世論が形成されたが、検察は『機械的上告』を選択し、最終審で完敗した」とした。一審、二審とも無罪判決が出たにも関わらず、最高裁まで持ち込んだ検察の責任を問う声も高まっている。
一方、李氏や李氏が会長を務めるサムスン電子は、「司法リスク」のため、これまで、大規模な戦略的投資やM&A(企業買収)などに制約を受けてきた。韓国の公共放送、KBSは、「この判決により、李会長は約10年にわたる司法リスクから解放され、半導体事業の競争力回復や新規事業への投資、組織再編などの経営活動に本格的に集中できるとの見方が出ている」と伝えた。
東亜日報によると、判決確定に、韓国の財界からは歓迎の声が上がっている。大韓商工会議所のカン・ソクグ調査本部長は同紙の取材に「企業経営リスクの解消はもちろん、韓国経済全体に肯定的な波及効果が期待される」と話した。
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