両氏は、トランプ氏が1期目の2018~19年に3回会談した。トランプ氏は朝鮮半島の非核化を求め、18年6月のシンガポールでの初会談ではこれに大枠で合意。しかし、19年2月のハノイでの会談で非核化のプロセスなどをめぐり交渉が決裂した。これを受け、北朝鮮は2021年に「国防5カ年計画」を打ち出し、核・ミサイルを加速させた。23年には憲法に「核保有国として核戦力を高度化する」と明記した。
金氏は21日、平壌のマンスデ(万寿台)議事堂で開かれた最高人民会議で演説し、「核を放棄させて武装解除させた後に、米国が何をするか、既によく知っている。われわれは決して核を手放さない」と非核化の意志が全くないことを改めて強調した。
一方、金氏は、「もし米国が非核化の執念を捨てて、現実を認めるなら、対座しない理由はない」と対話の可能性に含みを持たせた。また、トランプ氏について「私はまだ個人的ないい思い出を持っている」と述べた。
トランプ氏もかねてから金氏との4回目の会談に意欲を示している。ことし1月にはFOXニュースのインタビューに、金氏について「私は彼と仲が良かった、彼は賢い男だ」と述べ、「金総書記とまた接触を図るのか」との記者の質問に、「そのつもりだ」と述べた。トランプ氏は先月、韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領と会談した際も、金氏との再会談に意欲を見せた。李氏が「朝鮮半島に平和を築いてほしい。金総書記と会談して、北朝鮮に『トランプワールド』を建設し、世界史に残る平和をもたらすことを期待している」と述べると、トランプ氏は「金総書記とは良い関係にあったし、今もそうだ。彼は私に会いたいだろうし、こちらも楽しみにしている。関係をさらに良くしたいので、支持してほしい」と求めた。また、時期については「年内に会いたいと思う」とした。
日本も米国、韓国などと連携して朝鮮半島の非核化を求めている。トランプ氏が金氏との会談に意欲を示したことについて、当時、林芳正官房長官は「発言は承知しているが、米朝間の対話について予断を持ってコメントすることは差し控えたい」とした上で、「拉致問題や核・ミサイル開発を含む北朝鮮への対応については、米国をはじめとする国際社会との連携が不可欠であり、政府としても今後とも緊密に連携していく」と述べた。
金氏の演説に先立ち、ことし7月には、金氏の妹のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党副部長が、談話の中で米朝首脳会談の可能性について言及。トランプ氏と金氏との「個人的関係は悪くない」と述べ、会談の可能性に含みを持たせた。一方、与正氏は「わが国が不可逆的な核保有国の地位と能力を持ち、地政学的環境も根本的に変わった」とし、「米国が現実を受け入れなければ、(米朝)接触は米国の希望に終わる」とし、非核化を前提とした交渉には応じない立場を示した。
金氏が演説で米国との対話の可能性について言及したことに、韓国大統領室は「米朝対話を支援する」とした。
一方、金氏は演説で韓国との関係についても触れ、「われわれと韓国は、決して一つになることができない。2つの国家であることを国の法律で定めるだろう」と述べた。通信社の聯合ニュースによると、この発言について韓国大統領室の関係者は、「北朝鮮側の体制を尊重し、吸収統一を追及することなく、敵対行為をする意思はない。長い目で南北間の敵対を解消し、平和的関係への発展を進めていく」との立場を示した。
Copyright(C) wowneta.jp