LINEは2011年にネイバーの日本法人、NHNジャパンの開発者シン・ジュンホ氏が開発した。韓国でシン氏は「LINEの父」と呼ばれる。LINEは日本では約9600万人が利用しているほか、タイや台湾、インドネシアなどアジア圏で約2億人の利用者数を誇り、今や社会インフラに成長した。現在、LINEはLINEヤフーが運営しており、同社に出資する中間持ち株会社「Aホールディングス」には、ソフトバンクとネイバーが50%出資している。
LINEヤフーは昨年11月、LINE利用者や取引先の個人情報などが流出したと発表。一部のシステムを共通化していたネイバーの傘下企業がサイバー攻撃を受けたことによるもので、流出件数は約52万件にも上る。これを受け、総務省は今年3月と4月の2度にわたり、再発防止のための行政指導を行った。総務省はLINEヤフーがシステム業務をネイバーに過度に依存していることを問題視。LINEヤフーに対し、ネイバーとの資本関係の見直しを求めた。
LINEヤフーの出沢剛社長は今月8日、社内システムの運用やサービス展開など全般的な業務に関し、ネイバーへの委託を終了すると発表した。また、出沢氏は資本関係の見直しをネイバーとソフトバンクに要請していると説明した。ネイバーも10日、声明を発表し、「株式売却を含むあらゆる可能性を念頭にソフトバンクと誠実に協議を進めている」と明らかにした。
一連の動きに、韓国ではLINEの経営権が日本に渡るのではないかとの懸念が高まっている。総務省がLINEヤフーに対し、ネイバーとの資本関係を見直すよう促していることに、韓国政府は当初、静観の姿勢だったが、10日、科学技術情報通信部(部は省に相当)のカン・ドヒョン第2次官は「ネイバーにとっては持ち株を売却しろという圧迫になる恐れがある」として日本政府に対し遺憾の意を表明。その上で「韓国企業の意思に反する不当な措置があれば、断固として強力に対応する」と述べた。韓国大統領室も13日、ソン・テユン政策室長が記者会見を開き、立場を表明した。ソン氏は「韓国企業が海外でいかなる不利な扱いや条件もなしに自律的な意思決定ができるよう最大限支援していく」とし、「企業の意思に少しでも反する不当な措置については断固強力に対応していく」と述べた。一方、松本剛明総務相は10日、「行政指導は、親会社を含むグループ全体でのセキュリティーガバナンスの本質的な見直しの検討の加速化などを求めたものであり、経営権の視点から資本の見直しを求めたものではない」と述べ、経営権を奪うのが目的だとの韓国側の懸念を否定した。
韓国紙の朝鮮日報は「IT業界では『現在と同様にLINEヤフーに対する支配力を維持することがネイバーにとって最も有利』というのが一般的な見方だ。LINEを通じて日本はもちろん、東南アジアなど海外の新たな市場が攻略できるからだ」と解説。「ネイバー社内では『持ち株を維持できないのであれば、東南アジアの事業だけでも分離できないのか』などといった意見が出ているという」と伝えた。
韓国では、「LINEはネイバーが育てた世界的通信アプリ」との認識のもと、LINEの経営権を守ろうとの声が高まっており、ネイバーの検索サイトで、「LINE」のキーワードで検索された件数はここ最近、急増しているという。また、聯合ニュースによると、LINEへの関心の高まりとともに、LINEのアプリをダウンロードするユーザーも増えているという。
LINEをめぐるLINEヤフーとネイバー、ソフトバンクの今後の動きが注目される。
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