同党は曺氏がことし3月に結成した。党名に採用した「祖国」の韓国語の読み方は「チョグク」で、曺氏の名前と同一だ。曺氏側は当初、党名を曺氏自身の名前をそのまま用いた「曺国新党」としたい意向を示した。しかし、中央選挙管理委員会がこれを認めなかったため、「曺国」を「祖国」に改め、「革新」の言葉も盛り込んだ「祖国革新党」とすることとした。曺氏はことし4月の総選挙で10議席獲得することを目標に掲げ、選挙戦に臨んだ。
総選挙はユン・ソギョル(尹錫悦)政権の「中間評価」と位置付けられ、小選挙区(254議席)、比例代表(46議席)で争われた。開票の結果、最大野党「共に民主党」が系列の比例政党を含めて175議席を獲得した一方、尹政権を支える与党「国民の力」と系列政党は108議席にとどまり大敗した。「祖国革新党」は比例区(46議席)で戦い、得票率24.25%で12議席を獲得。目標議席を上回って「共に民主党」と「国民の力」に次ぐ第3政党となった。この結果に曺氏は、当時「国民が今の政権を裁くという意思を明確にした。国民の勝利だ」とコメント。尹大統領に向けては、結果を謙虚に受け止め、これまで数々の誤った政治や不正について、国民に謝罪するよう求めた。
曺氏といえば、かつて追及しても疑惑が絶えないことから「タマネギ男」とやゆされた人物。曺氏は検察改革や既得権益打破などを期待され、2019年9月に当時のムン・ジェイン(文在寅大統領)から法相に任命された。しかし、娘や息子らを名門大学に不正に入学させていた疑惑などが浮上。わずか1か月ほどで辞任に追い込まれた。曺氏にはその後もさまざまな疑惑が持ち上がった。
検察は曺氏を起訴したが、当時、その捜査チームを率いていたのが検事総長だったユン・ソギョル(尹錫悦)現大統領だ。尹氏はパク・クネ(朴槿恵)元大統領や、イ・ミョンバク(李明博)元大統領をめぐる贈収賄事件などを徹底的に捜査した手腕が当時の文大統領に評価され、2019年に検察トップの検事総長に抜擢された。しかし、曺氏の疑惑を追及したことから文政権と次第に対立するようになり、尹氏は2021年3月に検事総長を辞任した。だが、真っ向から政権と対峙した姿が国民に支持され、政界入りを求める声が高まることとなった。尹氏は大統領選に出馬し、当選。2022年5月、第20代大統領に就任した。
一方、曺氏は前述のように娘や息子らを名門大学に不正に入学させていたとして、公文書偽造・同行使罪や業務妨害罪で裁判にかけられ、昨年2月、懲役2年の実刑判決を言い渡され、現在、控訴中だ。大法院(最高裁)で実刑判決が確定すれば収監されることになる。曺氏はこうした「司法リスク」を抱えながらも、「第3政党」の党代表として活動を続けている。
曺氏は先月には韓国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島)に上陸した。曺氏は上陸後に読み上げた声明文で「大韓民国の解放を否定している」などとして日本に謝罪を要求。また、尹政権に対して「歴代最悪の親日政権、売国政府だ」と批判した。
総選挙で躍進した曺氏率いる「祖国革新党」だが、ここ最近、支持率が低下している。世論調査会社のリアルメーターが今月20、21日の両日に行った政党支持率調査で、同党は総選挙以降、最低の10.7%(今月第3週)で、前週比2.5ポイント下がった。同党は来月、全国党員大会を開き、代表を選出することにしている。支持率が低下している同党としては、全党大会を契機に支持率が大幅に上昇するとしてしばしば指摘される「コンベンション効果」に期待したいところだが、党内に曺氏の対抗馬がおらず、韓国メディアのニューシスは「『どうせ党代表は曺氏』という雰囲気により、大会が低調に終わることを(党関係者らは)懸念している」と伝えた。
「共に民主党」や「国民の力」も来月以降、党代表選を予定しており、両党とも選挙戦になる見通し。盛り上がることは期待薄の「祖国革新党」とは対照的な雰囲気だ。「コンベンション効果」で、「共に民主党」、「国民の力」共に勢いづけば、「祖国革新党」と両党との差が一層広がる可能性もある。新党「祖国革新党」にとっては正念場だ。
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