高市首相は今月7日の衆議院予算委員会で、台湾有事に関して、武力行使を伴えば、日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得ると答弁した。これに中国側は反発。日本への渡航自粛を呼び掛けたほか、日本アニメの公開延期、日本産水産物の輸入の事実上の停止など、相次いで経済的な対抗措置に出ており、今後の日本経済への影響は計り知れない。
こうした日中の対立激化に、韓国も状況を注視している。韓国紙の中央日報は19日に掲載の社説で、「今回の中日対立は突発的なものではない」とし、「米中戦略競争構図の中で結びつきを強めた中ロ朝に対抗し、韓米日協力が強化されたことへの反作用とみるべきだ」と指摘した。
また、韓国紙のハンギョレは20日に掲載の社説で、「この対立は、挫折と屈辱に満ちた近現代史の傷を抱える中国人の『集団的アイデンティティー』と、明治時代から長期間にわたり形成された日本人の『安全保障認識』が正面衝突した深刻な問題だ」と指摘。その上で「解決策の模索が極めて困難な難題であるだけに、両国は地域内での『軍事的緊張』を高める恐れのある無責任な動きを極力自制し、時間がかかっても対話と妥協を通じて問題を解決していくべきだ」と主張した。
韓国メディアのイーデイリーは、最近の日中両国の対立について、「2010年の尖閣諸島領有権問題、2017年の韓国・高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)問題の際と似た様相を呈している」と指摘した。中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島の沖で、2010年に漁船衝突事件が起き、この対抗措置として中国は当時、レアアース(希土類)の対日輸出を中止した。また、2017年に韓国が米軍のTHAADを国内配備した際も中国は強い反発を見せ、韓国映画の流入、中国人の旅行制限などの措置を取った。イーデイリーは、当時と似た現状に「旅行禁止から始まった制裁が、レアアース輸出中断など経済分野に広がれば、対立が長期化する可能性がある」と懸念する英経済分析会社キャピタル・エコノミクスの見方を伝えた。
中国政府が国民に対し、日本への渡航自粛を呼び掛けた中、韓国では中国人観光客の旅行先が韓国に変わり、韓国の観光業の需要が高まるとの見方が出ている。韓国の大手旅行会社やホテル、百貨店など、関連企業の株価はこのところ上がっているという。韓国紙のハンギョレは「中国人にとって日本は最も人気のある旅行先だったが、韓国がその空白を埋めている」と伝えた。
日中の対立は、日中韓3カ国の協力にも影を落とすことが懸念される。中国政府は、今月24日にマカオで開催予定だった日中韓文化相会合を延期することを決めた。中国外務省の毛寧報道局長は20日の記者会見で「日本の指導者が台湾に関して公然と誤った発言をし、中国の国民感情を傷つけ、戦後の国際秩序に挑戦した。中日韓3カ国の協力の基礎と雰囲気を破壊し、会議を開催する条件を失わせた」と述べた。
中央日報は前出の社説で、韓国政府に対し、「先の韓中首脳会談で合意した高官級の戦略コミュニケーション・チャンネルを稼働させ、現在、東北アジアで緊張が高まっている状況がさらに悪化しないよう管理する必要がある」と主張した。その上で、「折しも(今月22~23日に開催の)南アフリカ共和国での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席するイ・ジェミョン(李在明)大統領には、中国の李強首相と高市首相に会う機会がある。これを首脳間コミュニケーションの機会として積極的に活用してほしい」と求めた。
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