日韓両政府が、両国の防衛協力の一環として今月上旬に計画していた、自衛隊基地での韓国空軍機への給油支援中止は、韓国が領有権を主張している島根県の竹島の周辺を、支援対象の空軍機が先月末に飛行していたことに端を発する。韓国メディアによると、当時の飛行は訓練目的で、白煙を用いて韓国の国旗「太極旗」の模様を描きながら竹島上空を飛んだという。日本側はこれに反発し、給油支援中止を決めた。
今月1日、小泉進次郎防衛相は訪問先のマレーシアで韓国のアン・ギュベク国防部長官と初めて会談した。両氏は日韓両国の防衛協力についても意見を交わし、防衛当局間の定例協議と人的交流をさらに活性化させることで一致していた。小泉氏は4日、韓国空軍機への給油支援が取りやめとなったことについて、「日韓の防衛当局間の調整が整わなかった」と説明した。一方、アン長官は9日、KBSの番組に出演し「(先の防衛相会談で)安保協力関係を維持しようと話したが、(日本が)また違う姿を見せ、失望を感じる」と述べた。
その後、韓国軍の軍楽隊は、今月13~15日に東京の日本武道館で開かれた「自衛隊音楽まつり」への参加を見送った。日本側の給油支援取りやめを受けた対応とみられる。小泉防衛相は日韓関係への影響について「影響や距離ができるということではない」と強調した。一方、日韓の防衛交流の停滞は続いており、韓国海軍は、海上自衛隊と調整していた捜索・救難共同訓練について、月内開催を見送ることを決めた。
最近の一連の防衛協力停滞の動きには、前述したように韓国が領有権を主張している竹島をめぐる問題が関係している。今月14日には、竹島などについて、日本政府の立場を伝える東京・千代田区の「領土・主権展示館」に新施設がオープンしたが、韓国側はこれに抗議。外交部(外務省に相当)は同日、報道官声明を発表し、韓国として同館そのものの閉鎖を継続的に求めてきたにも関わらず拡張したとして「強い遺憾」を表明した。
先月末、高市早苗首相と韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領は初めて会談し、未来志向の日韓関係を安定的に発展させる方針を確認、首脳同士の相互訪問「シャトル外交」の継続でも一致した。日韓が今後も良好な関係を維持していくであろうことをうかがわせていただけに、最近の防衛交流の停滞、「領土・主権展示館」の新施設をめぐる韓国側の反発は、外交的対立の火種になりかねず懸念される。
そのほか、歴史問題でも不穏な雰囲気が見られる。新潟県佐渡市の世界文化遺産「佐渡島(さど)の金山」をめぐり、金山で朝鮮半島出身労働者が強制労働に従事した歴史を反映すべきと主張する韓国は、今月21日に同市で独自の式典を開催する。9月に日本側が主催した、鉱山で従事した全ての労働者の追悼式に、韓国側は追悼の辞の内容で日本側と折り合えなかったとして欠席した。
こうした中、韓国国会のウ・ウォンシク議長は16日、SNSで日韓関係についての見解を投稿した。最近の日韓間にはいくつか懸念されることがあるとし、歴史問題を挙げながら、「この問題に対する真摯な解決努力なしには、全ての協力が砂上の楼閣になることを忘れてはならない」と強調した。また、ウ氏は「未来志向で安定的な韓日関係のためには三つの柱がしっかりと立っていなければならない」とし、「痛ましい歴史を直視すること」「経済協力を深化させること」「北東アジアと朝鮮半島の平和のパートナーとして協力すること」を挙げた。
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