<W解説>約4年半ぶりに開かれた日中韓首脳会談、成果と課題は?
<W解説>約4年半ぶりに開かれた日中韓首脳会談、成果と課題は?
日中韓首脳会談が27日、ソウルで開かれた。開催は2019年12月に中国・成都で開かれて以来、約4年半ぶり。岸田文雄首相、中国の李強首相、韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の3人は会談後、共同宣言を採択した。日中韓首脳会談を今後定期開催していくことや、経済・貿易など6分野で協力していくことを確認した。一方、安全保障については日韓両国と中国との間に温度差があることも浮き彫りとなった。

日中韓首脳会談は、2008年から国際会議に合わせるのではなく、独立した形で開催し、以降、3か国の持ち回りで定期的に開いてきた。これまで、核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応や、経済協力などを話し合ってきた。

2019年は12月に中国の四川省・成都で開かれ、北朝鮮への対応で緊密に連携していくことで一致。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や日中韓自由貿易協定(FTA)など自由貿易を推進していくことも確認した。

しかし、翌2020年は日韓関係の悪化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大も影響して見送られた。その後2021年、2022年、そして昨年も開催されることはなかった。

昨年3月、岸田首相は、来日した韓国の尹大統領との共同記者会見で「ハイレベルの日韓中プロセスを早期に再起動する重要性で一致した」と述べ、日中韓首脳会談の再開に意欲を見せた。

昨年11月、4年3か月ぶりに開かれた日中韓外相会談で、韓国のパク・チン(朴振)外相(当時)は、3か国首脳会談の早期開催に向けて努力することを望んでいると口火を切った。これに、上川陽子外相は開催に前向きな発言をしたが、中国の王毅外相は直接言及しなかったとされる。ただ、3か国外相は「なるべく早期で適切な時期」に開催するため、作業を加速化することでは一致した。

中国は当初、米国との対立激化を受け日韓に接近しようとしていたが、昨年11月に対面による米中首脳会談が開かれるなど、米国との対話ムードが広がると、日韓との会談に消極的な姿勢に転じた。それでも議長国の韓国は、昨年中や今年4月の実施を模索したが、調整が難航し、実現しないまま月日が過ぎた。

しかし、議長国の韓国が中心となってその後も開催に向け調整を推進し、約4年半の空白期間を経て、27日、ようやく開催にこぎつけた。会談では外交・安全保障や貿易、人的交流などが主な議題となった。相互理解と信頼を深めるには頻繁な意思疎通が必要だとして、3か国首脳会談を今後は定期的に開催することを確認。2019年を最後に中断している日中韓自由貿易協定(FTA)の締結交渉を加速化することでも一致した。人的交流面では、来年から2年間を日中韓の文化交流年とし、2030年末までに大学間の交流事業を進めるほか、観光などで4000万人の交流を目指すこととした。会談後に採択した共同宣言には、1)人的交流 2)気候変動への対応などを通じた持続可能な開発 3)経済協力と貿易 4)公衆衛生と高齢化社会 5)科学技術協力とデジタルトランスフォーメーション(DX)6)災害救援と安全―の6分野での連携を盛り込んだ。

一方、安全保障に関しては日韓と中国の間に認識の差があり、共同宣言でも深く言及されることはなく、北朝鮮問題では、朝鮮半島の非核化に向けた努力を継続することでは一致したが、具体的な解決策には至らなかった。読売新聞は「前回の首脳会談の成果文書では『我々は朝鮮半島の完全な非核化に関与している』としていた。今回の共同宣言では、朝鮮半島の非核化について『それぞれ立場を強調した』と述べるにとどめた」と指摘した。また、韓国紙の中央日報は「『韓半島(朝鮮半島)の完全な非核化が目標』との文言は宣言に含まれなかった」とし、「会談で中国が『韓半島の完全な非核化に向け努力する』という表現に同意したのと差がある」と伝えた。

一方、韓国紙の東亜日報は「今回の3か国会議は、長い空白期を経て再開されたこと自体、つまり、コミュニケーションのモメンタムをつくったということに意義を置くべきだろう」と指摘。「半導体などのサプライチェーン問題、北朝鮮とロシアの兵器取引や北朝鮮の非核化、台湾海峡の緊張などの問題は一旦脇に置き、気候変動や災害対応などの長期的な協力課題で共通分母を探そうとしているのもこのためだ」とし、「今回の会議を機に、激しい新冷戦対決の流れの中で、韓中日3か国が『干渉外交』に乗り出すという点では、その意味は大きい」と論じた。

次回会談の議長国は日本が務める。NHKは「次の議長国の日本としては、中国や韓国との懸案もある中で、会議を定例化し、関係強化を図れるかが課題」と伝えた。

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