ルビーロマンは、石川県砂丘地農業研究センターが開発した品種で、2008年に初出荷された。粒が大きく、鮮やかな紅色が特徴。粒の大きさが直径3.1センチ以上、糖度18度以上、均一な着色といった厳しい基準が設けられている。また、出荷箱にはそれぞれの生産者が責任と自信をもって出荷している証として産地名、生産者名を記入した「生産者シール」が貼られているほか、2008年からはルビーロマンの正規品を示すロゴマークも採用。ロゴマークは3つの輪からなるデザインで、JA全農いしかわのルビーロマンの情報発信サイト「Ruby Roman CLUB」の説明によると、3つの輪は、買う人(消費者)、作る人(生産者)、その間を取り持つ人(流通関係者)を表しているという。皆が一緒になってルビーロマンを育てることで、この3つの輪を大きく膨らませていきたいとの思いが込められている。しかし、このロゴマークをめぐっては、昨年8月、韓国の業者がルビーロマンの名前でインターネット販売していたブドウに無断でロゴマークを使用していたことがわかり、石川県は業者に警告した。ロゴマークの使用停止を求め、従わない場合には法的措置も辞さないことを伝えたところ、業者は、今後は使用しないとする確約書を提出した。
しかし、ルビーロマンの名称については、前述したように韓国で商標登録が済んでいないため、法律上、使用を止めることはできない。
韓国で「ルビーロマン」とうたうブドウが販売されていたことが分かったのは2021年のことだった。同年7月、韓国の大手経済紙が「シャインマスカットに取って代わる...一房8万ウォンの特級ブドウ」との見出しの記事を掲載。当時の記事は、ルビーロマンを石川県産の日本最高級ブドウと紹介した上で、初めて韓国の生産者の手によって国内産品種として栽培され、販売が始まると伝えた。
日本でもこのことが報じられ、石川県側は当時、「初耳だ」と驚愕(きょうがく)。農研機構がDNA鑑定した結果、韓国で販売されていたブドウとルビーロマンの遺伝子情報が一致した。韓国に苗木が流出したとの見方が浮上した。日本では2021年4月に施行された改正種苗法でルビーロマンを含む農作物の種や苗を海外に不正に持ち出すことは禁じられたが、苗木が韓国に持ち出されたのは改正法の施行前だった。
また、新しい品種を開発した際、品種登録を行うと種や苗などを独占的に利用する権利を持つことができるが、国際法上、品種保護手続きは最初に流通してから6年以内に各国で行う必要があり、石川県は日本国内では登録をしていたものの、海外では期限内に行っていなかった。
韓国では基準を満たさないブドウが「ルビーロマン」として出回っており、県としてはブランドを何としても守るため、次善の策として2022年10月、韓国特許庁に「Ruby Roman」の商標を出願。しかし、「ルビーロマン」は2021年に韓国内の種苗会社によって品種名称登録されており、商標法では、植物新品種保護法に基づき既に登録された品種名称と同一か類似した商標は登録できないと定めていることから商標登録はできていない。
県は先月、韓国の国立種子院に対し、「ルビーロマン」の品種名称登録の取り消しを申請。取得先に対しても譲渡交渉する方針だ。先月18日の中日新聞は「県としては、次善の策として商標が登録できれば、販売業者らに対し、販売を差し止める法的措置を講じ、偽ブドウの流通を制限できるとみている」と狙いを解説。一方、記事によると、現地では生産・販売の前提となっている「品種名称登録」を基に、現在までに31の農業者が申告して生産や販売を行っているといい、記事は「登録取り消しのハードルは高そうだ」と指摘した。
先月19日、金沢市の中央卸売市場でルビーロマンの初競りが行われた。最も高いものは1房100万円で競り落とされた。石川県の馳浩知事は先月の記者会見で、ルビーロマンが韓国で生産・販売されていることに関連し、「徹底的に守ります。そして徹底的に戦います」と述べた。商標登録は実現できるか。
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