原発輸出は尹前大統領が力を入れて推進してきた。尹氏は世界の原発需要の拡大をにらみ、経済的な効果を狙うとともに、尹政権の前のムン・ジェイン(文在寅)政権で低迷した原発産業の復活を試みようとした。尹氏は在任中、2030年までに10基の受注を目標に掲げ、「原発セールス外交」を積極的に展開した。昨年9月には、火力発電の割合を減らし、原子力発電の割合を引き上げようとしているチェコを訪問。パベル大統領と原発受注を含む両国の協力強化について議論した。尹氏はパベル氏との当時の会談で、「韓国とチェコが共に建てる原発として、両国の経済成長に寄与する互恵的なプロジェクトになる」と強調した。
チェコは、ドコバニ地域にあるドコバニ原発など4基の建設を推進しており、韓国は同原発の新規建設事業をめぐり、2022年に受注獲得に乗り出した。米ウェスティングハウスとフランス電力公社も受注を目指していたが、韓国水力原子力は価格競争力と工事期間の順守能力をアピール。そして、昨年7月、ドコバニ原発2基の新規建設事業の優先交渉権を得た。
しかし、翌月、ウェスティングハウスは、韓国水力原子力が技術を盗用し、知的財産権を侵害しているとして、チェコの反独占規制機関に法的対応と陳情を提起した。その後、11月、韓国水力電子力と韓国電力は取締役会でウェスティングハウスとの協力原則を承認。今年1月、この紛争は両社間で合意文書を交わすことで終結した。
韓国水力原子力はことし6月、チェコ政府との間で、原発建設に関する最終契約が成立したと発表した。チェコのドコバニ地域での新規原発事業は1000メガワット級のドコバニ5号機、6号機を2036~37年までに建設するもの。受注総額は4000億チェココルナ(約2兆6000億円)に上る。韓国が海外で原発を受注したのは、2009年のアラブ首長国連邦(UAE)のバカラ原発以来、16年ぶりのことだった。
米ブルームバーグ通信はことし5月、韓国が今後10年間で最大の原発技術輸出国の一つに浮上する可能性があると予想した。ブルームバーグは当時配信した記事で、世界で計画・提案された原発事業400件余りを分析した結果、韓国はそのうち43%を受注できる位置につけていると伝えた。原子炉を建設できる国や企業が限られる中で、韓国は地理的、政治的に比較的有利だと指摘。「韓国の目立たずとも効率的な原発産業は、東・南海岸を中心に活発で、中国やロシアとの連携を敬遠する西側諸国の注目を集めている」と分析した。
しかし、チェコでの新規原発事業の受注をめぐり、韓国水力原子力と韓国電力がウェスティングハウスと結んだ合意には、今後、韓国水力電子力と韓国電力が原発の受注活動を行うことができる国・地域とできない国・地域のリストが添付されていることがわかった。チェコを除く欧州連合(EU)や英国、日本、ウクライナなどはウェスティングハウスのみ進出できると記されているという。韓国の公共放送KBSは「実際に、韓国水力原子力が欧州市場でも将来性の高いポーランドの原発事業から撤退したことが分かり、ウェスティングハウスに実質的に優先進出権を譲ったのではないかという懸念も広がっている」と伝えた。
また、東亜日報などが伝えたところによると、ウェスティングハウスとは今後50年間、原発輸出時に1基当たり約9000億ウォン(約950億円)の物品・用役購買契約を交わしているほか、契約には約2400億ウォンの技術使用料を負担する内容も盛り込まれているという。
韓国紙のハンギョレは20日付の社説で、「契約(合意)の締結過程を考えると、当時、政治的危機に陥っていた尹錫悦政権が、政治功績をアピールするために無理な譲歩をしたと疑わざるを得ない」と指摘。チェコでの原発受注を急ぐあまり、不利な内容の合意を受け入れたのではとの見方を示した。その上でハンギョレは、「韓国水力電子力と韓国電力が政権の圧力で不平等な契約を受け入れたのではないか。真相究明が必要だ」と主張した。
与党「共に民主党」は、協定の破棄と責任者の問責を求めた。また、大統領室は所轄官庁の産業通商資源部(省)に対し、事実関係の調査を指示した。一方、KBSによると、韓国水力電子力は合意内容について、長期的には利益が得られる構造だとして、「屈辱的な契約ではない」と反論しているという。
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