<W解説>佐渡金山の追悼式、ことしも韓国側は不参加=日韓関係改善も、依然、埋まらぬ溝
<W解説>佐渡金山の追悼式、ことしも韓国側は不参加=日韓関係改善も、依然、埋まらぬ溝
世界文化遺産「佐渡島の金山」の労働者のための追悼式が13日、新潟県佐渡市で開かれた。県、市、地元市民団体でつくる実行委員会が主催し、約70人が出席した。「佐渡島の金山」をめぐっては、世界遺産登録時、日本政府が朝鮮半島出身労働者を含む全ての労働者のための追悼行事を毎年開くことを表明。式典は昨年に続き2回目の開催となった。しかし、韓国側は昨年同様、出席を見送った。韓国の通信社、聯合ニュースによると、韓国政府の関係者は「韓国人労働者が意思に反して動員され、強制的な労役を強いられたという点が適切に判断されてこそ追悼の格を備えられると判断したが、(日韓)双方の追悼の辞の内容の中で、労働の強制性に関する具体的な表現で接点を見出せなかった」と説明している。

「佐渡島の金山」は、「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の2つの鉱山遺跡で構成。17世紀には世界最大級の金の生産地となり、1989年まで操業が続けられてきた。日本政府や新潟県は「江戸時代にヨーロッパとは異なる伝統的手工業で大規模な金生産システムを発展させた、世界的にもまれな鉱山だ」としている。

一方、佐渡金山には戦時中、労働力不足を補うため、朝鮮半島出身労働者が動員された。そのため、韓国側は当初、「佐渡島の金山」が世界遺産登録を目指すことに反対した。日本が登録を目指すのであれば、朝鮮半島出身労働者が強制労働に従事した歴史を反映すべきとの主張を続けた。だが、強制労働か否かの見解は日韓で食い違っており、日本政府は2021年4月、先の大戦中に行われた朝鮮半島から日本本土への労働者動員について「強制労働には該当しない」との答弁書を閣議決定している。

日本は韓国側と水面下で協議を重ね、佐渡市内の展示施設で朝鮮半島出身者を含む鉱山の労働者に関する新たな展示を始めた。「佐渡島の金山」における全ての労働者のための追悼行事を、毎年現地で開催することも決めた。そして昨年7月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産委員会の会議が開かれ、審議の結果、韓国を含む委員国の全会一致で「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録が決まった。

追悼式は昨年11月に初めて開かれたが、韓国側は追悼の辞などに関して、日本側と立場の違いがあるとして、前日に欠席することを決め、現地で独自の追悼式を開催した。

今月13日、新潟県、佐渡市、地元市民団体でつくる実行委員会の主催で、昨年に続き2回目の追悼式が開かれた。開催に先立ち、韓国政府は今年も欠席を表明。聯合ニュースによると、韓国政府の関係者4日、「韓国人労働者の魂を慰霊し、遺族を慰める方向で開催されるよう積極的に日本側と協議し、実際に両国間で真剣な協議が進められた」とした一方、「現実的に核心的な争点について意見の隔たりを縮められなかった」と説明した。追悼の辞の内容の中で、「労働の強制性に関する具体的な表現で接点を見いだせなかった」とした。

13日の追悼式では、はじめに全員で黙とうをささげた。この後、実行委員長の中野洸さんが「全ての労働者の苦労があって世界遺産に登録されたことを認識し、亡くなった全ての人に哀悼の意を表する」と述べた。

日本政府代表として、昨年の追悼式には生稲晃子外務政務官が出席したが、今年は外務省の岡野結城子国際文化交流審議官が出席した。今年は、政務ではなく事務レベルが出席したことについて岩屋毅外相は12日の記者会見で「外務省として総合的に判断した」とした。岡野氏は追悼の辞で「朝鮮半島から来た労働者は、戦争という特殊な社会状況とはいえ、危険で過酷な環境で困難な労働に従事した。先人が紡いできた歴史に思いを致し、未来に継承していくと改めて誓う」と述べた。

昨年に続き、韓国側が欠席した中で開かれた式典について、キョンヒャン(京郷)新聞は14日付けの社説で「両国の協力のため『過去を踏まえて、未来へ進もう』という韓国政府と国民の善意を踏みにじる行動だ」と批判。その上で、「佐渡鉱山が世界遺産登録されるまでの過程での約束を崩し、国家間の信頼を損ねた日本政府の誠意のなさに強い遺憾を表す」とした

中央日報は15日、「イ・ジェミョン(李在明)政権が未来志向的な関係発展のため、前向きな姿勢を見せている中、日本政府は依然として歴史問題で硬直しているとの声が出ている」と伝えた

韓国側は年内にも佐渡市で独自の追悼行事を開くことにしている。

追悼式の後、佐渡市の渡辺竜五市長は「全ての労働者の追悼式に韓国側が出席しなかったことは残念だ」とした上で、「地元としてはぜひ出席してほしいが、歴史的な問題も含め外交の問題は国が責任を持ってやるべきだ」と話した。

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