金氏は「ドイツ・モーターズ」の元会長が2009~12年、株価を不正に引き上げるなどした事件に関わった疑いで2020年4月、最大野党「共に民主党」の前身の「開かれた民主党」から告発された。ソウル中央地検は今年7月、金氏に事情聴取を行った。現職大統領の夫人が検察から聴取を受けるのは金氏が初めてのことだった。この聴取では検事が大統領警護処の施設に出向いて行われるなど、特別待遇があったとして当時、批判された。
捜査の結果、地検は今月17日、金氏を不起訴処分としたことを明らかにした。その理由について、「金氏が株価操作に関与したかどうかを詳しく調べた結果、金氏がこの事件の主犯らと共謀したり、主犯らの株価操作の犯行を認識、または予見し、口座管理を委託したり、株式の売買注文を出したりして、犯行に加わったということは認められないと判断した」と説明した。
また、金氏をめぐっては、2022年9月に、在米韓国人の牧師から高級ブランド「ディオール」のバッグを受け取ったとされる疑惑が浮上し、収賄などの疑いがあるとして検察が捜査を進めてきたが、この疑惑についても今月初め、「金氏がバッグなどを受け取った見返りに便宜を図ったことは認められないと判断した」として、検察は金氏を不起訴処分とした。
韓国紙のハンギョレは2日付の社説で、尹大統領がかつて検事総長を務めていたことを引き合いに「検事総長出身の大統領の夫人を何が何でも守ろうとする検察の姿は気の毒なほどだ。今後、検察は国民の前で『公正と常識』という言葉を使わないでほしい」と検察を痛烈に批判した。
一方、野党は金氏をめぐる疑惑について特別検察官による捜査を求め、国会に特別検事法案を提出し、強行採決に持ち込んだが、尹大統領は拒否権を行使。今月4日の本会議で採決が再び行われ、同法案は否決された。
金氏が高級ブランドバックの受領疑惑、株価操作疑惑ともに不起訴処分となり、聯合ニュースは「検察が金氏に免罪符を与えたのではないかとの批判が高まりそうだ」と伝えた。
最大野党「共に民主党」は18日、沈雨延検事総長の弾劾訴追案を提出する方針を固めた。これを伝えた聯合は「国会で検察官の弾劾訴追案を可決するには、在籍議員の過半数の賛成が必要だ」とした上で、「『共に民主党』は国会(定数300)で170議席と過半数を占めており、沈氏の弾劾訴追案は可決するとみられる」と報じた。
法務部(部は省に相当)次官を務めていた沈氏は、今年9月に検事総長に就任した。法務部・検察の主要分野で卓越した力量を発揮していたことを買われ、尹大統領から指名された。
沈氏の就任前に開かれた国会法制司法委員会の人事聴聞会で、検事出身の「共に民主党」議員は「自分さえ総長、高検長、検事長になれればいいという利己心のせいで、検察組織全体が死につつある」と指摘した上で、沈氏に対し、金氏の疑惑などを「きちんと処理すると誓約したはずだと私は確信している」と投げかけ「大統領に忠誠を誓ったか」と尋ねた。この質問に沈氏は「あまりに侮辱的な質問だ」と不快感を示し、「検事たちが今、出世するつもりで捜査を進めているとお考えになるのか」と反論した。
一方、韓国紙の朝鮮日報は18日付の社説で、「全ての問題は、尹大統領夫妻が自ら招いたものだ」とし、「金建希夫人が大統領選挙時に国民の前で約束した通り、内助だけに忠実だったならば、そもそも何も起こらなかっただろう」と指摘した。その上で「尹大統領は金建希夫人が起こす問題を無条件にかばって擁護したが、このために民心は離れていった。これが総選挙惨敗に繋がり、もはや国政動力そのものを失っている状況だ」と批判した。
世論調査会社の韓国ギャラップが18日に発表した世論調査の結果によると、尹大統領の支持率は22%で、前回調査(9月24~26日)より1ポイント下落した。不支持理由として「金夫人をめぐる問題」は14%で2番目に高かった。金氏の公開活動について聞いたところ、「減らすべきだ」は67%で、「現状のままでよい」(19%)を大きく上回った。また、今回の調査では、金氏の疑惑を政府から独立した特別検察官に捜査させる特別法案の導入の是非についても質問。「導入すべき」は63%、「必要ない」は26%だった。
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