<W解説>韓国・尹大統領の弾劾審判、宣告日の持ち越し続く=市民や裁判所警備の警察官も疲労の色濃く
<W解説>韓国・尹大統領の弾劾審判、宣告日の持ち越し続く=市民や裁判所警備の警察官も疲労の色濃く
韓国の憲法裁判所による、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の罷免の是非を判断する弾劾審判の宣告は先週も行われなかった。宣告は当初、今月14日に行われるとみられていたが、持ち越しとなっている。通信社・聯合ニュースが伝えたところによると、憲法裁では先月25日に尹氏の弾劾審判の最終弁論が行われて以降、ほぼ毎日評議が開かれており、28日(金)も1時間ほど議論されたが、宣告日について結論は出なかった。宣告日については、市民の安全を確保する必要があるため、警察やソウル市などとあらかじめ協議した上で2~3日前に憲法裁が各機関に通知する。このため、宣告は早くても4月3日になるとみられ、3月中の宣告はなくなったといえる。韓国紙のハンギョレは「尹大統領の弾劾訴追日から100日が過ぎても結論が出ていないことで市民の不安は高まっており、迅速な言い渡しを求める声が上がっている」と伝えた。

尹氏は昨年12月、国内に向けて「非常戒厳」を宣言した。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。

非常戒厳は早期に解かれたものの、韓国社会に混乱をきたし、現在も不安定な政治状況が続いている。「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。昨年12月、採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これを受け、尹氏は職務停止となった。

同案の可決を受け、憲法裁が6か月以内に尹氏を罷免するか、復職させるかを決めることになった。罷免となった場合は、60日以内に大統領選挙が行われる。

憲法裁では1月から弁論が行われてきた。弾劾審判では、戒厳令の正当性が争点となり、国会訴追団側は、「非常戒厳」の宣言が、憲法77条が規定する「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」との要件を満たさず出されたことや、戒厳時に国会へ軍を動員し政治家らを逮捕しようとしたことなどが憲法違反だと主張した。一方、尹氏は審判に自ら出席し、「非常戒厳」の宣言は統治行為だったとして正当性を訴えた。

憲法裁では先月25日、尹氏も出廷して最終弁論が開かれた。尹氏は「非常戒厳」を出した目的について「亡国的な危機的状況を知らせ、憲法制定権力である主権者が出てくるよう訴えることだった」とし、その上で「目的を相当部分達成したと考えている」と述べた。一方、弾劾訴追した国会側を代表して出廷し、最終意見陳述を行った野党議員は「尹大統領は憲法を破壊し、国会を蹂躙(じゅうりん)しようとした。民主主義と国家の発展のために罷免しなければならない」と主張した。

尹氏の弾劾審判が結審し、尹氏の罷免の是非は憲法裁の判断に委ねられることとなった。憲法裁による宣告日について、韓国メディアの多くは当初、今月14日に行われる可能性が高いと報じてきた。憲法裁からは、予め宣告日の通知があるが、同日までにその通知すらなく、宣告は持ち越されることになった。

14日の宣告が有力視されていたのは、過去に弾劾訴追されたノ・ムヒョン(盧武鉉)、パク・クネ(朴槿恵)両元大統領が、いずれも弾劾審判の最終弁論から約2週間後の金曜日が宣告日だったためだ。尹氏の弾劾審判は先月25日に結審。14日は結審から約2週間後の金曜日だった。

だが、宣告は持ち越されており、聯合ニュースは宣告日について、早くても4月3日との見方を伝えた。また、憲法裁の裁判官2人が同月18日に退任することから、「その前の週の金曜日である11日に言い渡されるとの見方も出ている」と報じた。

今月最後の週末となった29日も、ソウル市内では尹氏の弾劾に賛成派と反対派の双方による集会が開かれた。弾劾賛成派からは、宣告が遅れていることに批判も出ている。韓国紙のハンギョレによると、同紙の取材に応じた会社員の一人は「なぜこのように引き延ばしているのか分からない。本当にこのままでは弾劾が棄却されるのではないかと心配だし、ストレスがたまる」と話した。

また、聯合ニュースは「憲法裁判所付近を警備する警察がバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥った。宣告は当初3月半ばと予想され、警察はこれに基づいて警備計画を推進してきた。だが、宣告日が一向に決まらないことで、疲労と予算不足の二重苦に見舞われている」と伝えた。
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