<W解説>6年ぶりに北朝鮮で国際マラソン大会=英国人ユーチューバーが滞在中、ガイドにぶつけたタブーな質問
<W解説>6年ぶりに北朝鮮で国際マラソン大会=英国人ユーチューバーが滞在中、ガイドにぶつけたタブーな質問
6年ぶりに、北朝鮮の首都、ピョンヤン(平壌)で今月6日、平壌国際マラソン大会が開かれた。外国人ランナーも多数参加して開催された中、大会に出場した英国人ユーチューバーが、北朝鮮のガイドに対し、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の後継者について質問し、その動画が公開され話題となっている。

大会は、北朝鮮の市民ランナーのほか、中国や英国、ポーランドなどから外国人ランナーも参加した。北朝鮮では元々、外国人観光客にはガイドが付いて行動は制限されており、今回も、コロナ禍前と同様、参加者たちはツアーグループの一員として入国した。滞在中はガイドから離れないことや、最高指導者(金総書記)について批判的な発言をしないことなど、参加者たちには4つの注意事項が徹底された。

こうした中、韓国メディアのイーデイリーが伝えたところによると、約233万人のチャンネル登録者がいる英国人ユーチューバーのハリー・ジャガード氏がガイドに対し、金総書記の後継者に関連するデリケートな質問をぶつけた。

金総書記の後継者をめぐっては、娘のジュエ氏が候補と目されている。ジュエ氏が北朝鮮の国営メディアによってはじめて伝えられたのは2022年11月のことだった。当時、北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」などは、ICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星17」の発射に成功したと報じる記事の中で、「火星17」の前を白いダウンコート姿の少女が金総書記と手をつないで歩く写真などを公開。「『愛するお子様』が同行した」と伝えた。

その後もジュエ氏は金総書記の軍事分野の視察に同行するなど、その姿が北朝鮮メディアを通じて度々公開され、今や、そうした画像は珍しくなくなってきている。

韓国の国家情報院は昨年1月、ジュエ氏について、「有力な後継者とみられる」との見解を示し、7月には、ジュエ氏が「後継者教育を受けている」とする分析結果を国会に報告した。ただ、他のきょうだいが後継者になる可能性も排除しなかった。

さらに国家情報院は昨年10月、ジュエ氏について「地位の格が上がっている」との分析を国会に報告した。ジュエ氏が、党の行事で金総書記の妹のキム・ヨジョン(金与正)氏の案内を受けたり、チェ・ソンヒ(崔善姫)外相の補佐を受けたりしていることなどを根拠に挙げた。

前出のジャガード氏は、ガイドに対し、「金正恩氏の娘のキム・ジュエ氏が後継者になる可能性はあるか」と踏み込んだ質問をした。他の質問にはためらわず答えていたガイドは、ジュエ氏の名前が出た瞬間、戸惑った表情となって口ごもり、「私もよくわからない」と言葉を濁した。こうした質問は北朝鮮では当然、タブー視されている。

ジャガード氏は平壌入りを目的に、英国のアマチュアマラソン協会所属として、今回のマラソン大会に参加したという。ジャガード氏はこのほど、質問した場面も含め、北朝鮮に滞在中に撮影した映像を公開した。

北朝鮮は今年2月、コロナ禍以降、5年ぶりに世界各国からの団体観光客の受け入れを北東部の経済特区、ラソン(羅先)に限って再開したが、一転、わずか3週間で中断した。詳しい理由は不明だが、現地を訪れた欧米からのユーチューバーが、帰国後にメディアの取材に対し、北朝鮮の実情を語ったことが影響したとされている。ユーチューバーたちは「北朝鮮の人々が貧困を隠そうとしないことに驚いた」、「北朝鮮は統制の厳しい国だということは知っていたが、実際に経験した統制のレベルは想像を超えていた。トイレに行くときでさえ、ガイドに報告しなければならなかった。世界のどこにもこんな経験をした国はなかった」などと語った。

北朝鮮がコロナ拡大以降、外国からの人の往来を制限してきた中、今回、6年ぶりに開催したマラソン大会をきっかけに、外国人観光客の受け入れを本格化させるのか注目が集まっているが、今回、英国人ユーチューバーが配信した動画が何らかの影響を及ぼすのか気になるところだ。

First Tourist in North Korea’s Capital After 5 Years KP




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